第42章 Valentine
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時は遡り数時間前...
T.O.G内、Redforce社内の会議室の一室。
シャンクスをはじめとしたメンバーと向かい合うは、あるプロジェクトの協同運営社。
「では、方針はこのままで」
社長、とRedforceの仲間に目線を向けられたシャンクスは、資料をまとめ頷いた。
「ありがとうございます!よろしくお願いします」
「今季も頼んだ」
よろしくな、とグループ傘下の中でも歴の長い下請け会社の社長に笑いかける。
「大頭、久しぶりに行きませんか?」
くい、と飲む仕草を見せた彼に 、悪い、と笑って断りをいれる。
「ちょっと、今夜は予定があってな」
「じゃあ、しかたねぇや」
また都合の良い時に、と珍しく断ったシャンクスをあっさりと受け入れる。
打ち合わせの終わった会議室の扉が開いた時だった。
とたた、と駆け込んできたのは、5歳ほどの女の子。
「おーがしら!」
会議室の奥にいたシャンクスへ一目散に駆け寄っていく彼女。
「ココア!」
行く手を止めようとしたのは傘下の社長。
確か彼女は彼の孫娘だったはず、とシャンクスは彼の肩を叩いた。
「なんだ?どうした?」
遊ぶか?と資料をテーブルに置いて、駆け込んできた彼女を抱き上げてやると、えっと、とモジモジする。
結婚した娘の所に孫が生まれた、とうれしそうに見せてくれた写真から随分大きくなったな、と微笑む。
「なに持ってんだ?」
小さな手で、大事そうに持っている袋を指す。
「えっと、あの、これ、おーがしら、に」
柔らかそうな丸い頬を赤く染めて差し出された紙袋。
「おーがしら、チョコ、好き?」
「ああ、好きだぞ」
よかった、とはにかむ彼女から受け取った。
「ハッピーバレンタイン、おーがしら」
「お?」
ちゅ、と小さく頬に触れた感触。
「こ、ココアっ!」
慌てている祖父をよそ目に、満足そうに笑う孫娘。
「今日、大頭に会いに行くと言ったら、ついていくと聞かなくて...」
申し訳なさそうに、降りなさい、とシャンクスの首に捕まる孫娘を降ろそうとするが、いや、と彼女は首にしがみついた。
「こりゃ、まいったな」
さてどうしたものか、と、娘よりも幼い女の子から向けられた目線に、弱ったなあ、とシャンクスは紙袋の中でかわいらしくラッピングされたお菓子を見下ろした。
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