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依々恋々 -Another story-

第40章 Welcome. sofa,


あいてるか?と居酒屋よろしくシャンクスが入ったのは、日本庭園が美しい料亭。

いらっしゃいませ、と出迎えた店員が、お名前頂戴できますでしょうか?と問いかけた。

「あら、社長さん!」
そこへ通りかかった、和装の女性。
「やあ、女将さん。
 思いつきで寄ったもんで、連絡もなにもしちゃいねぇんだが、」
「構いやしません」
どうぞ、と笑顔で出迎えられる。

「今日は、えらい可愛らしいお連れさんですね」
いつもこんな顔の強面さんばっかり、と眉を吊り上げてみせる。

「今日は仕事じゃねぇんだ」
「そのせいやか?
 いっとう男前に見えるんは」
「あっはっは!よしてくれよ。
 板前にバレたら毒、盛られちまう」

軽口を叩くシャンクスと案内されたのは、日本庭園を望む一室。

「今日は、いかがしましょう?」
自らおしぼり等を配膳した女将がにこやかに問う。

「ジウ、食いたいもん、あるか?」
「え?いや、突然言われても...」

店の雰囲気からみて、日本料理か懐石料理を主とした店。
なにを食べたいかと問われても、咄嗟に出てこない。

「任せてくれるか?」
悩むジウに気付いたシャンクスが、向かいでにっこりと笑う。
お願いします、と頭を下げるジウにクスリと笑い、女将に声を掛けた。

「板前に任せる」
「承知しました。
 お酒はどうしましょう?」
どうするかな、としばし考える。

「運転手がいたほうが良いか?」
聞かれたジウは、ううん。と首を横に振る。

「日本酒で適当に繕ってくれ」
お待ちくださいませ、と女将が退席してすぐに、卓の支度がされた。

 ✜

「うん、うまい」
料理に合う、と美味しそうに酒を飲むシャンクス。
4合の酒瓶には、『雨後の月 別誂』とラベルがある。

「『雨後の月』...きれいな名前のお酒ね。
 徳富蘆花かしら?」
なんだそりゃ?と酒瓶を手に取るシャンクス。

「随筆の一編に、『雨上りの空に、 冴え冴えと光輝く月が周りを明るく照らす』っていう一節があるの」
「ふぅん。洒落た名前だとは思ったが、それが由来なのか」
「わからないけどね」

休日の昼下がり。
明るく煌めく緑花の庭を眺めながら、のんびりとランチデートを楽しんだ。

 ✜

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