第39章 Stepper
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「あれ、残しておくべきでしょうか?」
何も言わずに煙草の入った上着と香水瓶と携帯を引っ掴んで執務室を出て行ったシャンクス。
一連を見ていたアメリは、鏡に残された線を指差した。
ほっといていいんじゃね?と言うヤソップ。
「またなんか突拍子もないモン思いついたんだろ」
下手に探らんがいいぞーと、自身の執務席に戻った。
(彼女さん関連だったら、消しといたほうがいいんじゃ...)
じっ、と線の残った鏡を見つめているセシルを見て、自分が消しに行くのもなぁ、と迷っていたら、シャンクスの執務席に向かうベックマンの手にウェットティッシュがあるのに気付き、自身の業務へと戻った。
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-靴、何センチだ?-
遅番勤務のため、遅めの14時過ぎに携帯を見ると、恋人からそんなメッセージだけが送られていた。
なんのこっちゃ?と手製の弁当を食べながら
-23.5〜25.0cm
メーカーと靴の種類によるけど-
と返す。
それから昼休みが終わるまで待ってみたが、既読がついただけで返信は無かった。
(突然、なんだったのよっ!?)
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確か、今年の健康診断の時、身長は190cmだったと思う。
部屋の中でのジウは、自身の肩に額がつく程度なので、160cm無いくらいだ。
ジウの身長が157cmだったとして、雑誌による身長差の理想は15cmなので、だいたい175cm前後。
その差をヒールで埋めるならば、18cm程度の高さが足されるとちょうどいいのか、と商業施設の靴売り場を目指した。
✜
目の前の靴に黙る。
「18cm...」
そらそうか。
15cm定規+3cmだぞ、と想定よりも厚く、高いヒールに唸る。
(ジウのイメージじゃねぇなぁ)
夜のネオン街で、下着が見えそうなほどに短く、胸が零れそうなほどに襟ぐりの開いたドレスを着て、華やかに髪をセットしてお酌をしてくれる姐さん方が履いているのをよく見るタイプのデザインのそれに、違うなぁ、と考える。
(靴という線はナシ、と)
さて、振り出しに戻った。
どうやって彼女との身長差を縮めようかと、試行錯誤する。
(なんかいい方法ねぇかなぁ)
あわよくば彼女からもキスしたくなるような、と下心満載の思考を巡らせながらデパートを闊歩していると、門を曲がったところで人と出会した。