第39章 Stepper
身長差の話
やっぱり、15cmくらいかな
キスもしやすいし
あの、実は私の彼、私とそう身長差無くて...
ここだけの話、あんまり友達に紹介したくないっていうか
あっ!でも、顔はかっこいいんで、写真は見せます!
背は高い方がいいかな!
「3高」とか言ってた時代もあったし!
執務室で適当に見流していた経済誌に、女性向け雑誌が紛れ込んでいた。
多分、アメリかイヴあたりが読んでいたのだろう。
ジウはあまりこういうのは読まないよなぁ、となんとなく捲ると、インタビュー誌面に書かれていたのは「私たちの理想のカレ」。
巷の女性に、男性について、顔、収入、体格、趣味 etc...
「理想」とされる条件をインタビューを元に統計したものが掲載されていた。
『理想の身長差は15cm!』
デカデカと書かれたポップ体に、ジウは、と頭の位置を思い出す。
徐ろに、執務席の後ろのハンガーラックの隣に設置された全身鏡の前に立った。
「15cm」
ポツリと呟いて、デスクのペン立てから定規とマジックペンを取り出す。
姿見の前に立つと、鏡面にぺたりと定規を当て、きっちり15cmを測った。
耳あたりにキュ、と線を引く。
それから、頭頂部から上15cmの位置にも、同様に引いた。
いつだったか。
ジウからのキスを求めたら、首筋さえ見上げるのにどうしろと?と困った顔で返された。
確かに、これだけの差があれば、そう簡単には届かないだろう。
どうすれば、ジウからのキスを頻繁にもらえるだろうか?
うーん?と鏡の中の自分とにらめっこをする。
(座る、とか?)
デスクからキャスターチェアを引っ張り込んで掛ける。
だいたい、ジウの胸あたりだろうか。
される分には楽そうだが、する分には辛いな、と気付く。
(ジウからあまりキスをもらえないのは、身長差もあるのか)
困ったもんだ、と足を組んで首を傾げる。
姿勢よく椅子に掛けたり、少し、だらけて座ったり。
程よい姿勢がないものだなぁ、と座面を上げたり下げたりする。
「15cm、15cm」
何か上手いこといい身長差になれないだろうか?
真剣な顔で鏡中の自分と睨み合うシャンクス。
「くつ?」
そうだ。ヒールだ。
なぜ思いつかなかった!と立ち上がった。
✜