第38章 だいすき、しか言えなくなるまで...
(魚焼いて、大根おろして...
あ、そういえばビールもう無かったな)
忘れてた、とT.O.Gにテナントとして入っているスーパーに寄ったジウは、アルコール類の陳列棚に向かった。
シャンクスが好む銘柄の酒を選び、セルフレジに並ぶと、隣の人に気付く。
「あ」
「おう」
こんばんは、と会釈する。
「頭のところか?」
「はい。ベックマンさんは...晩酌ですか?」
ベックマンの手元のかごには、缶ビールと瓶酒。
「まあな」
「ほどほどに。
まあ、彼よりはお強いでしょうが」
「あの人は、酒の場の雰囲気や酔うのが好きなだけで、強くないからな」
おっしゃる通り、とジウは笑って会計をした。
同じく会計して袋詰めをしたベックマンが、ジウから酒瓶を取り上げた。
「向かう先は同じだ」
「お手数おかけします」
同じ住居階層で降り、部屋の前で荷物を受け取る。
「よかったら、また皆さんとお話したいです」
「わかった。声をかけておこう」
ありがとうございました、と会釈して部屋に戻った。
遅かったな、とリビングから顔を出したシャンクスは、すでに部屋着に着替えていた。
「ごめんね。ゆっくり買い物しちゃって」
「いいけどよ...あ、酒、重かったろ
呼べばよかったじゃねぇか」
6缶パックのビールが入った買い物袋をヒョイ、と取り上げたシャンクス。
「レジでベックマンさんと偶然会って、上に上がるまで、荷物持ってくれたの」
「ベック?」
うん、とキッチンに向かうジウを追いかけ、1本取り出したビールを冷蔵庫にしまう。
「あまり、ベックと二人になるなよ?」
「え?別になにもなかったし、優しかったよ」
そうじゃなくてな、と難しい顔で冷蔵庫の扉を閉めたシャンクス。
「まあ、ベックも女が来るって時に勘違いさせるようなことはしねぇか」
その辺は実にうまくやっているようだし、と頷いて、自身の恋人だと紹介した手前、ジウと会社の幹部の仲間がどうこうなる事はないだろう、とシャンクスは缶ビールを開けた。
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