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依々恋々 -Another story-

第37章 FRIENDS



「手、痛む?」
ジウの言葉に、シャンクスはいいや、と首を横に振った。

「町を離れて暮らす俺と違って、ダンはこれからもあそこでの暮らしがある。
 狭い田舎で昔気質な奴らも多い。
 ダンを理解してやれないやつだっている」

そんな場所で晒すのはダンのためにならない、と買った缶コーヒーのプルタブを起こす。

「シャン」
車止めに軽く腰掛けるシャンクスに、ん、と両手を伸ばすジウ。
「抱き締めてほしいの」
「こ、こでか?」
まだ人も車も多い時間。
いいのだろうか、と周りを伺うシャンクスを、早く、とジウは急かした。

「もっと」
背中に腕を回してくっついてくるジウをギュッ、と強く抱く。

「誰も何も、失ってなんかない」

より強く、きつくジウを抱きしめるシャンクスの腕。

「あなたは、奪ってなんかいない
 傷つけてもいない」
「っジウ!」
掻き抱くシャンクスの髪を優しく梳いた。

「何もっしてやれてないんだっ」
「シャン、」
「ダンの気持ちを、知らない振りをしたっ!
 それしか、できないっわかってたのに...俺はっ」
「シャン、こっちを見て」
興奮気味のシャンクスの頬を両手で包むジウは、聞いて、と瞳を見つめた。

「あなた、言ったじゃない。
『大事な友達に変わりない』って。
 前とまったく同じようには難しいかもしれない。
 でも、幼馴染としての絆は消えないでしょう?」
「ジウ」

大丈夫、と引き寄せたシャンクスの額に自分の額を突き合わせる。

「もしも、ダンさんが『友達をやめてほしい』と言ったら、あなたは承諾するの?」
「それは、」
「あなたから彼へ、彼からあなたへの感情が異なっていたとしても、間違いじゃない。
 ダンさんと出会って、友達になれたことを後悔しないで」

ダンを止めるため、口を塞ぐのではなく蹴り飛ばしたのは、シャンクスの「友達」としてのダンへの誠意だったと、ジウは理解していた。

幼馴染としての信頼や友情を失うことを恐れていたのは、シャンクスの方だった。

「また、一緒に酒飲んでくれるかな」
「うん。絶対飲んでくれる」

街灯の影でしばらく抱き合った二人は、また車へと乗り込み、ゆっくりとシャンクスの自宅へ帰った。

                    end
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