• テキストサイズ

依々恋々 -Another story-

第37章 FRIENDS



 ✜

広くした作業場に敷かれたブルーシートの上には、お造りや煮魚。カセットコンロには潮汁。寿司桶には地魚の刺身と握り。

「社長さんが来ると絶対こうなるのね」
「人たらしだからねぇ」

オレンジジュースが入ったプラカップを手に笑うジウ。

「シャンも嫌いじゃないから断れないんだろうし」
「帰り、大丈夫なの?」
「うん。お酒は飲んでないみたいだから」
車座の中で、同級生だったらしい漁師の男や、昔なじみの地元の人間と笑い合うシャンクスの手には、漁師たちが手にするビールや清酒の入ったプラカップではなく、500mlのペットボトル。
「愛されてますね」
マキノの言葉に少し笑っただけのジウ。

「ジウさん!でよかったっけ?」

声を掛けてきたのは、港の作業場でジウとシャンクスを海産物泥棒と勘違いして襲撃してきた漁師だった。

「俺、ダン。よろしく」
「ダンさん」
ジウです。と会釈する姿に、ふーん、と焼酎の入ったプラカップを煽る。
ここいい?とコンテナ箱をひっくり返した即席椅子を持ってくる。

「シャンクスってさあ、やっぱ女の子からみたらかっこいいわけ?」
「え?」
ダンの突然の質問にきょとんとするジウ。
マキノが、ダンさん、と制御する。

「失礼ですよ。
 ジウさんにも、社長さんにも」
「いやぁ、あいつは男からみたら気のいい楽しいやつだけど、女の子からみたらどんなのかなぁ、とちょっと興味本位」

笑うダンに、代わる代わる声を掛けてくる知人と話すシャンクスを見た。

「憧れる部分は、多いですよ。思考とか行動力とか」
焼酎を飲んだダンは、ふーん、と言って、なぁ!とジウの目の前にしゃがみ込んだ。
「幻想、崩すようなこと言っていい?」
幻想?と首を傾げたジウ。
「あいつ、自分で会社作ってでかくして。
 自分の育った養護施設に援助してってしてるけど、ヤクザ絡みなこともしてるからね」

ダンさん!と立ち上がるマキノの手を引いたジウ。

「顔の傷、なんでてきたか知ってる?」
答えないジウに、ダンは続けた。

「女利用していい蜜吸おうとして、失敗したのさ
 あんたも利用されてんじゃねぇの?」

いいとこのお嬢さんだったり?と見下ろすダンから、ジウは目線を外さなかった。
/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp