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依々恋々 -Another story-

第37章 FRIENDS



シャンクスが車を停めたのは、港だった。
いくつかの漁船が停泊しており、網や浮きが乾かしてある。

「ジウ」
来い、と手を引かれて車から降りると、強い磯の香りが鼻を通る。
手を繋いだまま歩いていくと、工場のような建物が見えた。
中は作業所になっているようだったが、人の姿はない。

えっと、と何かを探しながらシャンクスは作業所に入っていく。

「勝手に入っていいの?」
「構わないさ。
 朝の漁はもう終わってるし、夜の漁にはまだ早い」
無いなぁ、と何かを探して、積み上げられたコンテナ箱や木製もしくはプラスチック製のトロ箱を漁る。
「おっ!」
繋いだ手を離し、大きな水槽の脇にしゃがみ込む。

「あった」
ほら!といたずらっぽい笑顔で見せられたのは貝殻。

「言ってたろ?昔、初恋の男に貝殻をもらったって」
シャンクスの手には、ホタテ貝よりも細かく縦筋の入った、赤や赤紫の色とりどりの貝殻。
それ、と驚くジウに、あとはー、と数枚漁る。
「赤いやつ、だったな」
朱色のもの、赤紫のもの、ピンクっぽいものを選別する。

「どれがいい?」
がら、と掌に溢れている貝殻から、記憶のものに近い一つを探す。

「もう少し大きかったかなぁ?」
「子供の頃に見たから、大きく感じたかもな」
浅灼けた大きな手に乗せられた貝殻たちに、そうか、と手を伸ばす。
「これ、色の濃さは近い気がする」
貝殻の中でも、少し小さな、けれど濃く赤い一枚を選ぶ。

「ジウが気に入ったのにしたらいい」
「けど、いいの?」
無人の作業所を振り返る。

「構わないさ。
 どうせ破棄されるか、子どものおもちゃになるだけだ」
残った数枚を、積み上げられた貝殻の山に戻す。
「水で磨けばきれいになる」
少しの藻や海藻がついた貝殻をそっと撫でるジウの瞳が潤む。

「シャンクス」
すん、と鼻を啜ったジウが、ふわりと笑った。
「ありがとう」
夕陽に照らされた笑顔に、一つ頷いて抱き寄せる。

「あのままジウがハウスに来ていたら、俺は、」

え?とジウが顔を上げると、作業所に物音が響いた。

「なにやってんだ!この泥棒がっ」
「はっ!?うおっ!」

振り下ろされたなにかにジウを抱いて飛び退くと、きゃあっ!と作業所に悲鳴が響いた。
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