第37章 FRIENDS
「シャンクス...」
弱々しいルフィの声に、ハッと意識を引き戻す。
「寝ちゃったね」
ジウの言う通り、ルフィの肩に頭を預け、ウタはすうすうと眠っていた。
「今のうちに走る?
寝てる時の方が、車酔いしにくいんじゃないかな」
「そうだな」
ルフィにドリンクのボトルを預け、ウタを抱き上げる。
後部座席のベンチシートにウタを寝かせると、ルフィが乗り込んだ。
「珍しいな、前じゃなくていいのか?」
「ああ。ウタのそばにいる」
シャンクスに答え、これ使っていいか?とジウのひざ掛けを引っ張り出す。
足、出てねぇかなぁ?とそれをウタに掛けてやるルフィに、自然と口角が上がった。
助手席にジウを座らせてしばらく走ると、ルフィも寝入ってしまった。
「ハウスの近くまで行くか...あんまり近くだとウタは拗ねるだろうなぁ」
どうするか、とハンドルを操作しながらシャンクスは唸る。
「あまり寝かせると、夜、眠れなくなるよね。
あと1時間くらいで起こすとして...」
えっと、と考えるジウは、スマホで適当な場所が無いか探し出す。
あまり近くまで行き過ぎても、とシャンクスは最寄りのインターで降りた。
スマホの画面と周囲を何度も確認するジウ。
「どうした?」
「あ、ううん。こんなところだったかな?って...」
以前、ウタを送り届けた時は一緒に寝てしまっていたので、経路の景色の記憶が殆どなかった。
「ちょうどいい。少し、地元案内してやる」
シャンクスはいつものように手を繫ぐと、ここらもずいぶん変わったからな、と嬉しそうに笑った。
「いくつまでハウスに居たの?」
「15。高校は寮生活だ」
「遠いの?」
「電車とバス乗り継いで2時間ちょっとかかってたな」
ずいぶん遠いんだ、とサイドウィンドウの景色を眺める。
「あの頃は、乳児院と児童養護施設を兼ねていたから、子どもも多かったが、法が変わったりで運営も変化してきて、今では乳児院の方の受け入れはしてないからなぁ」
変わったなぁ、としみじみと零すシャンクス。
閉山された炭鉱跡。
本数の減ったバスの乗り継ぎ場だったという空き地。
学校までの近道にしていた獣道。
地元の農家から一部を借りて、ハウスで管理しているという田畑。
子供の頃に入り込んでどやされたという果樹園を通った。