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依々恋々 -Another story-

第37章 FRIENDS



 ✜

「忘れ物は無い?」
「「なーい!」」
よし、と閉まった扉のオートロックを確かめる。
玄関を飛び出して長い通路を走るルフィをシャンクスが呼び止める。
「危ないぞ」
「だいじょうぶー!」
俺がエレベータのボタン押す!とホールに駆け出していく。

シアーシャツにVネックのワンピースを重ね、ローファーに赤のバッグを持つジウの手をウタが揺らす。
ワイシャツにレザージャケット、ロールアップのパンツにサンダルを引っ掛けたシャンクスが、二人の荷物を手に歩く。

「ねえ、今日RedForceのみんなは?」
見上げてくるウタに、シャンクスが答えた。
「何人かは事務所にいるんじゃないか?ああ、ライムジュースは店舗だろうが、ベックとヤソップとルゥあたりはいるんじゃねぇかなぁ?ああ、ホンゴウとスネイクは明日まで休暇が出ていたから、また旅行とツーリングに行ってるんだろう」
「事務所にする人たちだけにでも会いに行きたい」
そうだな、と目線を寄越したシャンクス。
「ジウ、大丈夫か?」
「私?」
少し心配そうな顔に瞬く。

「ライムジュースには、会ったこと無いだろ?」
「そうね、初めて聞く名前かも」
「スネイクもだが、うちの幹部職で、ライムジュースはこのビルに入ってる喫茶室とか福利厚生関係の責任者、スネイクは運営部の責任者で、内部監査やクレドチェックの担当なんだ」
「内部監査...クレドチェックって?」
「『cred』。ラテン語で志だとか約束、信条だとかを意味するんだが、経営で言えば、企業全体、従業員が心がける信条や行動指針、といったところか」
「んー、職員必携みたいなものかしら?」
「『公務員倫理』に近いだろうな。その中でも、心掛けや行動指針に特化して規則化したものだな」
さすが資本金40億4,890万円だけある、とエレベータに乗り込む。

早く、早く、とパネルを見上げる二人の後ろで、少し身を屈めたシャンクスが、声を潜めて言った。

「ハウスの臨時の職員ってことにしとく。マキノさんの休暇期間の代替職員で二人の付き添いだと。多分、うちも休んでる連中が多いから、人は少ないと思うが」
「ありがとう。その、ごめんなさい」

開いたエレベータのドアから潜り出た二人。
謝る必要ない、とポン、と頭を撫でられ、走るなよ〜、と二人を追いかける背中に続いた。
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