第1章 レイン・エイムズと同室の女
冷たい目に射抜かれると、女生徒は観念したように俯きぽつぽつと言葉を話し出す。
「……噂の真偽を、その女に聞いていたんです。だってどうしても不正にしか見えないですから」
女生徒は目に涙を浮かべている。拳をぎゅっと握ってこぼれ落ちそうなのを我慢しているようだった。
「嘘ですよね!? まさかそんなことあるわけないですよね!?」
どうか否定して欲しいと懇願する表情でレインに詰め寄る。
私はそれを見て少し同情してしまった。
別に不正を働いたわけではないもの、急にぽっと出の身で彼の同室になったのは事実である。私がもし彼女の立場なら発狂してしまっても無理はない。100%とはそれだけ強い数字で、心の底から愛しているのだろうから。
「……噂? ああ、あれか」
レインは変わらず温度の無い目で彼女を見下ろしており何を考えているのかは分からない。変な噂を立てられても全く動じないのはさすが神覚者と言ったところ……。
「事実だが」
「え」
「え?」
事実では、ないが!?
「そ、そんな……そんなッ!!」
女生徒はその言葉を聞いてついに泣き出し、信じたくないと言った様相で取り巻きを引連れて走り去ってしまった。
残されたのは何も理解出来ていない私と相変わらず無表情のレイン先輩。
「って火に油注いでどうするんですか!? ますますえらい目にあいますよこれから!?」
「火に油? 事実を伝えなければマッシュの今後の生活に関わるだろう」
「え、なんでここで急にマッシュくん?」
「? 噂とはマッシュ・バーンデッドが迷路を破壊して入学したという話だろう」
私とレイン先輩の間を嫌な風が通り抜けた。
「確かに魔力無しであれは異次元の力だ。不正と思われても仕方がない。だがそれなら本人に聞けばいいものを、マッシュと仲がいいからとお前の方に当たってくるとは……? どうしたその顔は」
「ちがいます……」
「?」
「今先輩が肯定したのはそっちじゃない方『同室の女はレイン・エイムズのガールフレンド』っていう噂です!!!!!」
「え」