第1章 レイン・エイムズと同室の女
「僕の名前をもう知ってるなんて、噂は本当だったんだ……」
「違う違う違うガールフレンドじゃないからね。私レイン先輩の仕事を手伝うことになったの」
「仕事?」
私はフィンくんとマッシュくんに事の経緯を説明した。うさぎの下りとかは省いて。
「へえーそんな珍しい魔法があるんだ。相手の魔法能力や健康状態について解析できるってこと?」
「そうそう、そんなところ」
本当は好感度やら好きな異性のタイプやら他にもなんでもわかってしまうが話がややこしくなるので伏せておこう。人によっては気分のいい話では無いだろうし。……あ、マッシュくんの目が泳いでる……。
「そういうわけで、レイン先輩がいないときに監督生代理みたいな感じの仕事をすることになったからよろしくね」
「うん。よろしく」
教室に入ってきた時は空気がヤバすぎてどうなることかと思ったが、とりあえず友達はできたみたいだ。一安心。
「あなたレイン様のなんなのよ!」
全然一安心ではなかった。
授業が終わり帰寮しようとしたところ、廊下の狭いところで女生徒4人に囲まれてしまった。そして急に足で壁ドンされた。逃げられない。
何かと思って魔法を使ってみたところ、足ドンしてきた女生徒の前に『レイン・エイムズへの好感度……100%』と表示が出る。周りの3人も80%程度であり、なるほどこの人たちはレイン先輩のことが好きらしい。
よく考えたら彼は肩書きも然ることながら顔も整っていてかっこいいし、このくらいのファンがいて当たり前なのか。
「ええっと何か誤解があるようで……」
「何が誤解なのよ。急に入寮してきて彼に取り入って……男子寮に入るなんておかしいわ、どうせ親の権力でも使ったんでしょう!?」
「おかしいのはそうだけど違います!」
どうしよう、どう説明したら……。
うろうろと視線を動かして彼女のステータスを端まで確認する。
何かこの状況を打破するヒント、ヒント……。
「おい、そこで何してる」
廊下に低くよく通る声が響き渡る。足音の方を向けば、そこには渦中の人物の姿があった。
「レイン様!?」
「俺は今何をしているのかと聞いている」
「そ、それは……」
彼は狼狽える女生徒を引き剥がし私の前に渡って入った。冷たい目で女生徒を見下ろしている。