第3章 ※レイン・エイムズと奇妙な呪い
「……」
やはり向き合うしかないのか。
「……すまない、少しキツい言い方だったか」
「いや、ううん! ランスくんが心配してくれてるのは分かるよ。言ってることも正しいしね」
私がそれ以上何も言えないでいると、一人で筋トレをしていたマッシュくんがプロテイン片手にベンチの方へ近づいてきた。
「ちゃん。筋トレ後はタンパク質を摂取しないと」
「あ、あははそうだね……私もプロテイン飲もうかな」
私はごまかすようにシェーカーを受け取ってプロテインをシャカシャカと混ぜる。
ランスくんはそんな私を心配げに見ていたが、それ以上何か言ってくることもなかった。きっと彼は今話すべき相手は自分じゃないと暗に伝えてくれているのだろう。
とはいえ、何をどう言ったものか……。
放課後部屋に戻ると、まだレインは帰宅していないようだった。
私は週末に向けて準備をしながら、何を何からどう話そうかと思案する。
ちなみにここ数年は魔法の制御ができるようになったのでいらない情報はわざわざ見ないようにしている。つまりその……さっきランスくんが言っていた件については入学してからは一回も見ていない。誓って。
まあ異性に無興味な朴念仁のレイン先輩に限って実は性欲だけ強いなんてことがあるわけはないのでわざわざ見なくてもなんとなくわかるけど。
「だからこそ逆に言いづらいな、今回の話……」
こんな訳のわからない呪いみたいな魔法、一体誰がかけたんだよ。
しかし幸か不幸か、どう言い出そうかなどと考える必要は結果的に全くなかった。
窓から飛び込んできたレインの方から逆に詰められたからである。
「魔法をかけられていたというのは本当か」
レインはものすごい突風を巻き起こしながら窓から飛び込んできた。そして帰宅するなり私に詰め寄る。
その表情には珍しく少し焦りが滲んでいて、こんな時なのに心配してくれて嬉しいなどとちょっと思いそうだった。
とはいえ内容は問題である。
「ま、まさか学園長から聞いたんですか」
「そうだ。死の呪いをかけられたと」
「ああいや、それは大丈夫で……」
おそらくランスくんが気を遣ってくれたのだろう。レイン先輩は私の身に起きている具体的な症状は把握していないらしい。