第1章 レイン・エイムズと同室の女
指定された部屋は最上階かつ端の方の部屋で、いかにも特別な部屋ですという風貌をしていた。こんな場所に通される覚えがなさすぎて眩暈がする。
扉に手をかけると鍵はかかっておらず、そのまま中へ入ることができた。
「……来たな。お前が・か」
部屋の中では既に男性がひとり椅子に腰掛けて寛いでいた。
私の来訪に気づきこちらを振り返る。金と黒の髪がさらりと揺れ、温度を感じない金色の瞳と目があった。
その姿はクールな印象を受けるものの、端的に言えば整っていて正直少しドキッとしてしまう。
しかしこの人、どこかで見たことがあるような……。
「って、女?」
男性は驚愕の表情を浮かべたのち、しまったと呟いて頭を抱えてしまった。
どうやらこれは彼にとって予定外な状況らしい。
「やはりいくらなんでも私が男子寮に招待されたのは何かの手違いでしたか……」
「申し訳ない。男と聞かされていたが伝達ミスだったようだ」
はぁ、と彼はため息をつく。
「他者の情報を読み取れる変わった生徒が入ったと聞いて、監督生の仕事を手伝ってもらおうと思った。がさすがに女と同室にはできん。俺からジジイに言って新しい部屋を手配してもらおう」
「えっ。仕事の手伝い……ですか?」
私はその言葉に思わず身を乗り出してしまう。
2本線の無能などと言われてきた人生なのだ。自分の魔法が役に立てると言われれば食いつきたくもなる。
「ああ。俺は神覚者の仕事で忙しいのもあって監督生の仕事まで手が回らないことがあるからな。お前の魔法は生徒の状態を把握するのに役立ちそうだし、副監督生という形にでもなってもらおうかと思っていた」
「確かにそういうのは得意です! お役に立てると思……って神覚者!?」
そうだ、どこかで見たことがあると思ったらこの人去年の神覚者だ。名前は確か……レイン・エイムズだったはず。
私は思わずバレないように魔法を起動してしまった。神覚者になるような人が目の前にいたらステータスを見たくなってしまうのも無理ないということで許してほしい。
視界にぽわっと彼のステータスが浮かび上がる。
生年月日から家族構成、魔法についての詳細などが浮き彫りになっていく。私も一応は2本線なのでかなり細かいところまで見れるわけなのだが。
うさぎすっごい好きなんだ……。意外と可愛いところがあるな……。
