第1章 レイン・エイムズと同室の女
……と、そんなことがあったのが数時間前のことである。
彼の名はマッシュ・バーンデッド。
結果的に私は彼が破壊した迷路の穴をくぐってなんなく試験を突破することとなり、その後秘密を共有する友人となった。
聞けば彼は家族のために神覚者を目指しているとのこと。魔法が使えないにしても、確かにあの筋力ならどうにかなりそうな気もする。
自分のような地味な魔法しか使えない人間には神覚者なるものはあまりにも縁がないので、とりあえずマッシュくんを応援しようかと思う。
ひとまずは入学できたことだし、ゆるりと学園生活を楽しもうじゃないか。
……などと呑気に捉えていられたのは数時間だけの話で、本当の問題はここからであった。
「え!? あの、ここって男子寮では!?」
私が通されたそこは、誰がどう見ても男子寮であった。
一方私は誰がどう見ても女である。腰まで髪があるし、体格だって普通に女子の体型である。何がどうあっても男と見間違えるはずがない。
自分の所属がアドラ寮であり、寮のシステムとして内部進学組と編入組が組まされるという話は事前に聞いていた。がいくらなんでもこの展開は予想してない。
私は寮の管理人らしきおばさんに詰め寄る。
しかし女性は申し訳なさそうに首を振るばかりだ。
「それがねえ、あなたは理由があって急遽こっちに移動になったみたいなのよ。申し訳ないんだけど私は詳しいことを聞いてないから部屋に入ってから説明を受けてくれる?」
「ええ……」
なぜそんなことになっているのかは分からないが、何も知らないのであればこれ以上この人に聞いても仕方がない。
部屋に移動して詳しい話を聞くとしよう。
もしかしたら2本線のせいでまたどうしようもないことになっているのかもしれない……と思うと憂鬱な気分である。