第3章 ※レイン・エイムズと奇妙な呪い
しかし私の考えていた通りには未来は進んでくれなかった。
日を追うごとに妙な渇望感は増していき、最近はもうひんやりした食材に触るだけでも異常に反応してしまう。
「あぅっ」
「どうした」
「い、いえ! なんでもないです……」
レイン先輩は滝のように汗をかきながら料理をしている私を見て首を傾げている。このままではバレてしまうのも時間の問題かもしれない。
でもずっと恋愛に無興味だった純粋なこの人にいきなりこんな話できるわけがない。いくら言葉にしてちゃんと話し合おうと提案したのが私とはいえ無理なものは無理だ。
「とりあえずお弁当これで! 私先行きますね!」
そそくさと準備を終えて私は教室へ向かう。
ここ数日、先輩に対してこんな不自然な態度ばかりとっていて本当に申し訳ない気持ちだ。早く治さないと。
「それで結局オレに相談か」
「うん……絶対内緒でお願いします」
結局私は放課後ランスくんを呼び出して相談することにした。
彼が優秀だからというのもあるが、朝から晩まで妹のことしか考えていないこの人ならまあ大丈夫だろうと考えての人選である。
「ふむ……そんな奇妙な魔法は聞いたことがないが、こういうものならある」
そう言ってランスくんは一冊の本を見せてくれる。
「相手にとって一番嫌なことを無理やりさせる魔法?」
「そうだ。大抵の場合人間が一番恐れることは『死』だから、この魔法を使うことで相手の自殺を誘発することができる。つまりもしこの魔法がお前に使われていた場合明確に命を狙われていた可能性がある」
「なっ」
「だがどうやらお前は死ぬことよりエロい行為をすることの方が嫌だったらしい。おかげで命拾いしたな」
「えろ……ッ、ご、ごほん。それはよかったのかなんなのか……」
そりゃ死にたくないけどそんなに恐れて怯えるほど具体的に死ぬイメージなんかできてない。
私は異性からそういう目で見られることの方がよほどリアリティがあって苦手だった。
「……う」
嫌なことを思い出してしまいそうだ。
最近は"それ"はもうずっと意識して見ないようにしていたのに。
「……。オレはお前の事情は知らないが、こんな危険な魔法を使われていたのは明らかに問題だ。すぐ学園長に進言した方がいい」
「う、うんそうだね」