第3章 ※レイン・エイムズと奇妙な呪い
「なんか変な感じで……」
私はレモンちゃんに小声で返す。それ以上の説明がうまくできない。
「うーん、でも顔が真っ赤だし目が潤んでます。休んだ方がいいと思いますよ」
「ええ。熱はないと思ったんだけど……」
それは勘違いだったらしい。だとしたら確かに休んだ方がいいだろう。
私はひと言先生に断りを入れると、レモンちゃんに連れられて教室を後にした。
「それで……変な感じというのはどんな状態なんですか?」
廊下を歩きながら、レモンちゃんは心配そうにこちらを覗き込む。
「なんかこう体が熱い感じで、ムズムズする感じとかもあって……あと異常に人に触りたい」
私がそういうと、急にレモンちゃんはすごい顔をしてその場に立ち止まった。かと思うと恥ずかしそうに目を逸らし始める。
「どうしたのレモンちゃん」
「いやあの、それ……」
「うん?」
「……えっちな気分になっているのでは?」
「はい?」
突拍子もなさすぎる発言に私も変な顔になってしまう。
「だ、だって熱があるわけではないんですよね?」
レモンちゃんはそう言って私のおでこに触れようと手を伸ばした。
「ひゃうっ」
おでこを触られただけだというのに今自分のものとは思えないとんでもない声が出た気がする。
「あの……どうしてそうなっちゃったんですか?」
「私が聞きたいよ!!」
そういう行為をしたいなんて思ったことは誓って一回もない。むしろ昔から非常に苦手としていることの一つである。
それがなんで突然何の前触れもなくこんな……。
「もしかして魔法をかけられちゃったとか?」
「ええ、そんな魔法があるの」
「分からないですけど、そうじゃなきゃ説明つかなくないですか?」
「確かに……」
そうだとしたらどうしたらいいんだこれは。
ランスくんなら知ってますかね、とレモンちゃんは言ってくれたが、さすがに男の子に相談するのは気が引ける。
「我慢してれば治るかもしれないし、とりあえずはこのままでいるよ」
「分かりました。無理しないで下さいね」
「うん、ありがとう」
私は潤んだ目で頷いて、とりあえずその日は早退することにした。
寝てれば治るものなのだろうか、これは……。