第3章 ※レイン・エイムズと奇妙な呪い
「レイン先輩と……」
言われてみればレイン先輩は3年生、もうすぐ卒業してしまう。ということは一緒に仕事したり生活を共にできる時間はあと少し。
彼も今は学生の身だから多少は融通が効くにしろ、卒業したらあちこちに引っ張りだこでもう今のようには過ごせないかもしれない。
これからも一緒に仕事がしたいなら、私も魔法局に就職するしかない……?
「……確かに私、レイン先輩と仕事するの好きだよ。私の力を認めてくれた人だもん。……それに」
私はどこへ行くにも一人で、何もかも自分だけで解決しようとしてしまう先輩のことを思い浮かべた。
それだけの実力が伴ってしまっているが故、結果的に彼はいつも一人になっている。
「烏滸がましいけど、レイン先輩のこと支えたいなって思う」
彼の鞘になるって約束したのだし。
「じゃあ目指すは秘書? パートナーとか?」
「ふふ、どっちも楽しそう」
魔法局に就職か。
考えたことなかったけど、それを目標にするのもいいかもしれない。
私はパンを一つ手に取って頬張りながら、未来のことを想像した。
それからまた数日。
「んん……?」
朝目が覚めると、その日は珍しく体が重くなかなか布団から出られなかった。なんだか調子が悪い。
「熱がある……わけでもないかあ」
私はなんだか気持ちが悪い感じがするものの、具体的に何が悪いのかと言われると説明ができないという奇妙な症状に首を傾げていた。
レイン先輩に相談しようかとも思ったが今日は久しぶりに朝からいない。
机の上に『悪い。今日はどうしても早朝に出る必要があった。弁当の用意はしなくていい』との書き置きがある。
「まあ、熱がないならいいか。とりあえず学校行こう」
私は身支度を済ませると教室へ向かった。
「ん、んん……」
やっぱり何かおかしい。
いつも通りの席について授業を受けているのだが、なぜか全然集中できない。
ムズムズする感じというか、熱が上がっているようで上がっていないというか、無性に人に触りたいというか……。
「どうしました?」
隣の席からレモンちゃんが小声で耳打ちしてくる。どうやら心配してくれているみたいでありがたいのだが、どうしたのかは自分でもよくわからない。