第2章 レイン・エイムズと初デート
こんなに無表情でいつも通りにしか見えないのに、90%……。
私は恥ずかしさに思わず下を向く。
これ以上ドキドキして心臓の音が先輩に聞こえてしまったらまずい。
「……って、あ」
下を見ると眼下にはちょうど湖が広がっていた。星々の姿を反射して水面が煌めいているように見える。
それは上空から見下ろすにはなんとも幻想的な光景だった。
「綺麗ですね……」
思わず呟いた私に、少し飛ぶ速度を落としてレインも下を向いた。
「確かに。お前の地元は綺麗なところだな」
「ふふ。そうなんですよ」
自分の育った街をそう評価してくれるのは純粋に嬉しい。この湖は幼い頃から私たちの遊び場だったから。
それにしても、一緒に箒で飛びながら夜景を見ているなんてそれこそ本当にデートみたいなシチュエーションになってしまったような。
「?」
ふと私を抱きしめるレインの腕に力が入った。
不思議に思って振り返れば、珍しく眉をぴくりと動かしたのが見える。
「……お前はさっき、デート、とか言っていたが」
「えっ」
まさかレインの方からその話題を蒸し返すとは思わなかった。
驚いてうっかりバランスを崩しかけた私をがっちり抱きとめながら、レインは話を続ける。
「今日は見回りと視察をしただけだ。お前は休日だったのに結局仕事に付き合わせてしまったし、こんなものはデートとは呼べない」
「う、うん……? そうですね……?」
「……だから、改めてまた誘わせてくれ。次の休日がいつかは分からないが、なるべく予定を捻出する」
私はレインの言葉に目を丸くする。
「え……。そ、それはあの、正式なデートのお誘い、ということですか?」
「そうだ」
レインは相変わらず無表情のままで、その真意は測ることができない。しかし彼の前に浮かぶステータスの数字が、彼の言葉が決して冷やかしや冗談でないことを如実に物語っていた。
「先輩……」
自分の体温がこれでもかというほど上昇しているのを感じる。
90%の意味がどういった好意なのかは不明だし、この誘いもただ単に二人で出かけようというそれだけの意味でしかないのかもしれないが、それでもこの朴念仁気質な先輩が「デート」という言葉を否定しなかったのが嬉しかった。
「嬉しいです。楽しみにしていますね!」
「ああ、そうしてくれ」