第2章 レイン・エイムズと初デート
『好感度:90%』
ん?
見間違いかな。
目を擦り、再びその文字を見る。
『好感度:90%』
いや見間違いじゃないな。本当に90%って書いてある。
……え、なんで?!?
この短時間で何がそうさせたの!?
「どうした」
「あ、いやなんでもないです!!!」
私は慌てて魔法を解除する。
今見たものは……一旦頭の隅に追いやろう。
ぶんぶんと顔振って冷静になると、ちょうど商店街の端まで来ていたことに気づいた。
「ここまでで終わりか。魔力の気配は無さそうだ」
「では一応脅威は去ったということですか?」
「ああ。今後も警戒はするが」
「よかったです」
地元の安全が帰って来て私はひとまずホッとする。
どちらかといえば今は好感度90%の件の方が事件性あるな……。
「なら帰りましょうか」
私は自分の箒を取り出す。煩悩がすごいのでもうさっさと帰りたい。
しかしその様子を見たレインが何やら思案するように少し黙り、そして私から箒を取り上げた。
「先輩?」
「お前は病み上がりだ。なのに夜に歩かせてしまったからな……せめて帰りは俺の後ろに乗れ」
「え?」
「一人乗せるくらいなんともない」
「そういう問題じゃないですよ!?」
今日一日で私からレインに向ける感情も、その逆も色々変わってしまったのだ。
それが二人で箒に乗るとか……さっきまで3メートル空けて歩いていた人の発言とはとても思えない。
「ああ、後ろより前の方がいいか。その方が安定する」
「待て待て違う違うそうじゃない」
レインはひょいと私を持ち上げると自分の前に座らせる。そして自分も私を抱き込むような形で箒に跨った。
ものすごくその……密着している。
「ついさっき言語コミュニケーションを大事にしようって話しましたよねえ!?」
「……すまない、嫌だったか」
「え、いや。嫌というわけでは……」
「なら問題ない。行くぞ」
「先輩!!!」
レインは容赦なくそのまま飛び上がった。
両腕でがっちりホールドされている上に、空の上に行ってしまえばもう逃げ場がどこにもない。
誤解が解けた途端にこれだ。この人の距離感、0か100しかないの?
「ち、ちかすぎます……」
私の頭を巡るのは、『今私を抱きしめている人、私への好感度90%なんだよな……』ということばかりであった。