第2章 レイン・エイムズと初デート
レイン先輩に頼られるのは素直に言って嬉しい。
無能だと馬鹿にされ続けて来た人生で、この人だけが私の力を頼りにしてくれる。
私はそんな喜びとさっきまでのドキドキで頭がいっぱいになっていて、レイン先輩の様子が少し変だったことに気が付かなかった。
そんなわけで私とレイン先輩は残り、みんなは先に寮へと帰って行った。
いや厳密にはランスくんだけ別のところへ飛んでいったのだが。恐らくあのぬいぐるみを持っていくのだと思う。
私たちも軽く母に挨拶をして店を後にした。
母はなぜか終始上機嫌でニコニコとしていたが、一体母の目には何がどう映っていたのか……。
何はともあれ、実は全部嘘だということがみんなの前でバラされることがなくてよかった。
「……で、なんでそんな距離があるんですか?」
すでに薄暗くなり人通りの減った商店街を、レイン先輩はなぜか私から3メートルくらい離れて歩いている。ちょっと、いやだいぶ離れすぎじゃない? ソーシャルディスタンス?
「昼間とは違って人混みの状態ではなくなったからな。離れて歩いても問題ない」
「そう、かな?」
確かに辺りはもう静かだし、3メートル離れていてもお互いの声が聞こえないと言うことはない。
だけどそう言う問題じゃないというか、普通二人で移動しているなら並んで歩くもんではないでしょうか……。
まあ、あまり近くても緊張するしまた変な汗をかきそうなのでこれはこれで。肩を抱かれるよりはマシか。
「それで、魔力の反応はどうですか?」
「昼間ほど近くにいない。既にこの場を離れたかもしれないな」
「なるほど……」
それは脅威が去ってよかったと言うべきなのか、取り逃したと悲しむべきなのか。
後者だとしたら私のせいな気もするので申し訳ない。
「念の為商店街を一周しておく。警戒はしておけ」
「分かりました」
頷いて私はレイン先輩に駆け寄……ろうとしたが、私が歩みを早めるとレインも足早になるので3メートルの距離が縮まらない。
あれ? もしかして避けられている?
避けられるような心当たりならぶっちゃけありすぎる。今日はレイン先輩に迷惑しかかけていないので。