第2章 レイン・エイムズと初デート
「みんなごめん、お待たせー」
私はレイン先輩が部屋を出て行った後、顔を洗ったり服を着替えて身だしなみを整えたりして、荒れ狂っていた心臓を一旦収めることに成功した。
もう一度だけ深呼吸して冷静さを取り戻し、みんなの元へ戻る。
しかしふとレインの姿が目に入るとまた胸がキュンとしてしまった。このままでは心臓がうるさくなりそうなので、しばらくレインの方は薄目で見ることにする。
「おかえりちゃん。そろそろ帰ろうかなって話してたところだよ」
そう話すフィンくんの横でマッシュくんが大量にシュークリームを抱えている。魔法道具が起動された形跡がある……おそらくアレを使ったな。
「よく見たらもう夕方だね。待たせちゃってごめんみんな」
「大丈夫。ちゃんのお母さんのお店、すごく面白かったよ」
フィンくんの言葉にみんなも同じように頷いてくれる。
分かっていたことだが、私の友人たちみんないい子すぎる。
そうして帰ろうという流れになったところで、レインがふと立ち止まる。
「俺はここに残る。お前たちだけで帰ってくれ」
「えっどうしてですか?」
「お前にはさっき話しただろう。まだ奇妙な魔力の正体を突き止めていない」
「あ」
色々ありすぎてすっかり忘れていたが、そういえばそもそも今日私がこの人に妙に接触されることになったのはそれが理由だった……。
「それなら私も残ります」
「いや、俺一人で十分だ。お前は寮までランスに護衛してもらうといい」
「え、でも……」
確かにいくら私も2本線とはいえ戦闘能力は皆無なのだ。ついでに今ここで再び肩を抱かれたらいよいよ冷静でいられる自信もない。
本音を言えばレインの力になりたいが、自分の今の状態ではそうも言い出しづらいのが歯痒い。
しかしそれはともかくどうしてランスくん?
「やはり私では足を引っ張るだけでしょうか……」
「そんなことはない。だが」
レイン先輩はランスくんの方をチラリと見る。
「……お前が問題ないなら残ってもらいたい。正直、お前の魔法に頼りたい局面だ」
「! ぜひ! 私頑張ります!」