第2章 レイン・エイムズと初デート
「はいどうぞ」
「ほう……これは見事なテディベア。ありがとう」
ランスくんは興奮気味に顔を赤くしている。どんだけ妹さんのことが好きなんだ……。
だが嬉しそうにしているランスくんを見ていると私も嬉しくなってくる。やはり友達が喜んでいるのは良い。
するとちょうどその時、ガラリと戸を開けてレイン先輩が入ってきた。
「戻った。……ん、目が覚めていたか」
「はい。看病ありがとうございました」
「大したことじゃない」
レイン先輩はそう言うなり、私とランスくんを見比べて一瞬訝しげな顔をした。
「……俺は、お前に謝らなければいけない。すまないがランス、2人にしてもらえるか」
「? 分かりました」
ランスくんはいまいち状況を呑み込めて居ないようだったが、深く追及することもなくそのまま退出して行った。
改めて室内は私とレイン先輩の2人きりになる。
「謝られるようなことをされた覚えはないですが……」
「いや、お前がショックで気絶したのは俺がキスをしたせいだろう」
「ごほっ」
真顔で何を言うかこの人は。
「……言い訳にもならないが、俺はあの時本当に治癒魔法をかけるつもりだった。だが結果的にした行動はアレだ。恐らくあの魔法道具のせいで俺もおかしくなっていたんだろう」
レイン先輩は申し訳なさそうに視線を逸らす。
「誓って変なことはしないと言ったのに約束を破ってしまい、すまない」
「え、そんなことはいいんですよ謝らないでください! 元はと言えば蓋を開けた私が悪いし」
私は顔の前でぶんぶんと手を振る。
「というかそれよりあの魔法道具がレイン先輩にも効いたんですか!?」
「ああ、恐らくな」
「そ、そうなん……だ……」
私はむしろそっちの方が気になってしまった。
だってあれは0を1にする薬ではない。1を100にするものだ。
それがレイン先輩に効いたということはつまり……この人も少しは、私を意識していたということになるわけで。
「……どうした? また顔が赤くなっている。熱が上がったのかもしれない」
「そ、そうかも……」
心臓がバクバクとしているのが自分でも分かる。
「もう少し休んでおけ。まだマッシュたちが店の方で商品を見ているからな」
「はい……」
私は仮病のフリをして大人しく布団に潜り直す。
今はこの人の顔をまともに見れる自信がなかった。
