第2章 レイン・エイムズと初デート
どうしよう、心臓の高鳴りが止まらない。全身の体温が上昇しているのを感じる。
ああ、今すぐレイン先輩に抱きつきたい!
「どうした?」
窓を開けたレインがこちらを見て訝しげにしている。
「だき……じゃない、なんでもありません!」
私は衝動をなんとか理性で抑え込もうとする。
これはあくまで愛に関する感情を"増幅させる"ものであって惚れ薬の類ではない。0の感情を1にするものではなく、1の感情を100に増幅させるものだ。
つまり、まずい。ここで少しでも先輩に抱きついたりしてみろ、私がちょっと先輩を意識しちゃっていたのがバレる!
しかし私の頬は紅潮していて、汗もかいていて、しかも目も潤んできた。もう明らかに普通じゃない。
「熱があるんじゃないか? 治療系の魔法道具……はないか」
レインが一歩ずつこっちへ近づいてくる。
どうしよう。ド好みの顔面が近づいてくる、心臓が落ち着かない。ドキドキして耐えられない!
私は逃げるように一歩ずつ後退していくしかなかったが、狭い店内ではすぐに壁にぶつかってしまった。
「なぜ逃げる? さっきの魔法道具で酔っているのかもしれない、治療が必要だ」
「いやいやいやいや大丈夫ですほんと大丈夫なので」
「大丈夫じゃないだろう」
レインの手がこちらへ伸びてくる。
さっきまで肩を抱かれていたと言うのに、今は手が触れそうなだけで心臓が爆発しそうだ。
「……っ」
思わず目を閉じる。
視界が暗転して何も見えなくなっても、なぜか瞼の裏にレインの顔が浮かんでくる。重症である。
そしてやがて唇に温かいものが触れた。……唇に温かいもの?
「え?」
目を開くと至近距離にレインの顔があった。
状況を理解できずに呆然としていると、そのままレインは離れていく。
「え、今何しました?」
「キス」
「はぁ!??!?!?!??!?!」
衝撃の事実にいよいよキャパを超えてしまい、私はその場で意識を失うこととなった。