第2章 レイン・エイムズと初デート
母は私と同じ魔法を使う。要するに母にもステータスが見えるのである。
1本線なので私ほどの精度はないにしろ、私たちの間に恋愛感情がないことはすぐに見抜くだろう。
母なら嘘だと気付いた上できっと理解してくれる。
「でもその理論で言うとフィンくんに嘘ついてるのはいいんですか?」
「構わない。あれは嘘がつけないから本当のことを話せば一瞬で広まる」
「そうかなあ」
マッシュくんやドットくんはともかくフィンくんはそういうの結構大丈夫だと思うんだけど。
どちらかと言うとレイン先輩は『弟が心配だから余計なことに巻き込みたくない』と思ってるんじゃなかろうか……と思ったが、野暮なので黙っておくことにした。
「不器用ですよねえ」
「何が?」
「いいえ、なんでも」
口数が少なく表情にも出にくい人だから分かりづらいが、実はいつだって誰かのためにその剣を振るっている。
そういう人だからきっとみんなこの人のことが好きなんだ。
「困るなあ……」
彼からの好感度はほぼ変わらず55%。しかもその大半はうさぎ効果によるものである。微塵も意識されていないのがこうして目に見えてわかるというのに、私の方は少しずつこの人に引き摺られている。
今も近すぎる距離のせいで彼の息遣いまではっきり聴こえてしまっていて全然落ち着かない。
好感度とか、見えなければよかったかも。
「いらっしゃいませー」
魔法道具屋『』の扉を開くと、よく通る女性の声が響いた。聞き慣れた母の声である。
「ただいまお母さん」
「あら、お帰りなさい! ………、……たくさんお友達を連れて来たのね?」
今何かすごい間があったな。
これ(肩にかけられた手)のせいか……。
「う、うん。こっちは学校の同級生のみんな。それでこの人はか、かれ……先輩」
私が紹介するとそれぞれ名乗って挨拶をし始める。
レインも店内に入ったからか私を抱いていた手を離した。ようやく解放された私はほっと一息つく。なんだかどっと疲れた。随分心臓がうるさかったが彼にバレていないだろうか…。
そんな私を知ってかしらずか、レイン先輩は母に向けてぺこりとお辞儀をしている。
「初めまして。レイン・エイムズです。お嬢さんとお付き合いをさせていただいております」