第2章 レイン・エイムズと初デート
私の実家は魔法道具屋で、商店街のちょうど中心あたりにある。私はそこへ向けてゾロゾロと騒がしい同級生たちを引き連れ歩き慣れた道を進んでいく。
……レイン先輩に肩を抱かれたまま。
「もしかして私、この格好のまま実家に帰らなくてはいけないんでしょうか」
「ああ。建物の中に入るまでは隙を見せられないからな」
親にどんな顔すればいいんだ。
私が渋い顔をしているのに気づいたのか、珍しくレイン先輩が少し歯切れ悪そうにする。
「……お前にとって家族とはどんな存在だ」
「どんな、ですか」
突然の質問に驚きつつも、私は両親の顔を思い浮かべて暫し思案する。
改めてどんな存在かと聞かれると解答が難しい。しかし、そう思ったこと自体が私にとっては答えかもしれないと思った。
「当たり前にそこにいる存在というか、わざわざどんな存在かって考える必要もないような……そういう、人生の一部? みたいな感じです」
「当たり前に?」
「はい。スイーツを買うときは3人分買うとか、良い景色を見つけたら真っ先に共有するとか、そういうことを当たり前にしたくなる相手です」
「ふぅん……」
レインは相変わらず無表情で、その目から何を考えているのかは読み取れない。しかし重い声色から何やら真剣なのは分かる。
彼らが両親を亡くしたのがいつのことなのか分からないが、このようなことを聞いてくるあたり、あまり家族に関する記憶はないのかもしれない。
「……それだけ大切にしている相手なら、嘘を吐くのは忍びないな」
「ああ、気にしていたことはそれですか」
要するに私の家族に対して私と付き合っているという嘘を吐くのは、いくら私の身を案じてのこととは言えさすがに良心が痛むと、そういうことらしい。
「優しいですね」
「そんなことはない。普通だ」
レイン先輩はぷい、と視線を背ける。
「いいえ、優しいです! でもあなたは一人でいろいろなものを守ろうとしすぎです。フィンくんの分の生活費も全部出してるの知ってますからね」
「……なぜ知ってる」
「内緒です」
実際は彼のステータスの『お金の使い道』を見てしまっただけなんだけど。
私はレイン先輩の顔を覗き込み、にっと笑う。
「私の両親は心配しなくても大丈夫です。あれでいて私の親ですから」
「?」