第2章 レイン・エイムズと初デート
その時私が了承したのは、特に断る理由が無かったからというのもあるが、何より私がレイン先輩とフィンくんが楽しく休日を過ごしている姿を見たかったからである。
他のみんなも快く了承してくれたので、無事7人でのお出かけが決定した。
まあドットくんだけは『彼氏連れて来んのかよクソ羨ましいなイケメンこの野郎!!』とか言ってたけど……。
しかしこの選択のせいで私とレイン先輩の関係は更に引き返せない状態へと沼っていくことになる。
週末、みんなで箒に乗って(厳密にはマッシュ君は乗れてないけど……)商店街へやってきた。
この商店街は決して広くは無いが、その分お店が所狭しと並んでいて飽きることがない。人通りも多く賑わっている。
そしてここは私にとっては育った地元。当然ここらにある店の店主たちとは小さい頃から顔なじみ。
となると何が起きるかと言えば。
「おめでとうちゃん! あのレイン・エイムズと付き合ってるんだってね!」
「週末も一緒だなんて仲がいいわねえ。コロッケサービスしちゃうわ」
「もう同棲してるんでしょう? 卒業したら結婚だね」
あのゴシップ記事のせいでこんなところまで噂がバリバリに広まっとる……。
しかも色々尾ひれが付いている。気が早すぎるて結婚は。
しかも行く先々でレイン先輩が「こいつは俺にはもったいない良い女だ」とか真顔で言うせいでどんどん噂の信憑性が増している。
しまいにはこうして腕を繋ぎ始めた。ドットくんの視線が痛い。
あとフィンくんも信じられないものを見る目でお兄さんを凝視している。ごめん。
「あ、あの……どうしてそこまで徹底して嘘を貫こうとするんですか?」
私はレイン先輩と腕を組みながら、みんなに聞こえないよう小声で耳打ちする。
休日に仲良く過ごしているだけでも十分牽制になると思うし、ここまでイチャイチャバカップルみたいな姿を見せつける必要は無い気がした。
するとレイン先輩は何を思ったか更に私を引き寄せ肩を抱く。より顔が近い体勢になり、思わず心臓が跳ねた。
そんな私の動揺に全く気がついていない彼は前を向いたまま小声で返してくる。
「実は先程から奇妙な魔力を感じている。用心に越したことはない。俺から離れるな」
「えっ」
全く気が付かなかった。
さすが神覚者の魔力察知能力は桁外れている。
