第1章 レイン・エイムズと同室の女
「急に何を言ってるんですか!?」
レインがとんでもないことを言い始めたせいで急に恥ずかしくなって来た。意識し始めるとどんどん熱が上がってくる。0距離の位置に端正な顔があって逃げられない。
「女に触れたことはなかったが、こうも男と違うのか」
レインは興味深そうに、左腕で私を抱きしめたまま反対の手で腰や足を触ろうとしてくる。
「柔らかい」
「研究熱心なのはいいですが落ち着いてくださいよ!」
私は反射的に常態を逸らして逃げようとするものの、力の差があり過ぎて全く動けない。
というかあんなにモテてるのに女の子に触れたことないんだ……。その気になれば選び放題だろうに本当に女性に無興味なんだな。
それにしてもレイン先輩の手、大きい……ではなくて!
「あ、あ……あそこにうさぎがっ!」
「何?」
苦し紛れの適当な嘘だったが、レインは反応してそちらをみる。うさぎどんだけ好きなんだ。
私はその隙にするりと腕から抜けた。
「みっ見間違いでしたー。すみません、てかもう遅いので寝ますね。おやすみなさい!」
何か言われる前にすぐさまベッドへ飛び込み頭から掛け布団を被る。
「? ああ、おやすみ」
レインは不思議そうにしていたが、特に何も言うでもなく頷いて電気を消す。
しばらくして反対側のベッドへ潜り込んでいった気配がした。
ああ、どうしよう大変にまずい。
完全に、同室の男性を意識してしまったじゃないか。
「ちゃんどうしたの、すごい顔だけど」
当然のように一晩中眠れなかった私は、ひどいクマをつけて登校し翌朝の教室にてフィンくんに心配されることとなった。
レイン先輩は昨夜の出来事など何もなかったかのようにいつも通りで、私だけが取り乱して馬鹿みたいである。朝から忙しかったらしく教室まで着いてこなかったのが救いだ。
「あのさ、君のお兄さんって……格好良すぎない?」
「なんだ心配したのに惚気かい」
「あーそうだそういう設定だったね……」
「?」
弟公認恋人になってるの、厄介すぎる。