第1章 レイン・エイムズと同室の女
男女共にレイン・エイムズへの好感度が高すぎる。
無論好感度とは恋愛的な意味だけではなく尊敬や親愛や色々混じってはいるのだが、それにしたってモテ過ぎである。
「私、思ったよりとんでもない人の恋人(仮)になってしまったのでは……」
しかし今更後には引けない。
すでにゴシップ記事によってレイン・エイムズの恋人騒動は全世界に発信されており、私の顔も全国区になってしまった。どうせなら魔法とかでバズりたかったよ。
ただそのおかげもあってか、私に対する好感度は『興味』の他に『畏怖』の値が強めに出ていた。先輩の読み通り、興味は持たれている空気があるものの危ない絡み方をしてくる生徒は今の所いない。先輩様様である。
「とりあえずこんなところでいいかな。よし」
アドラ寮は一通り見て回った。部屋に戻って報告書を纏めよう。
「おーわったあ〜〜〜」
報告書をまとめ終える頃にはもうだいぶ夜が更けていた。口から大きなあくびが出る。
レインはまだ帰ってこないが、先に寝てしまおう。
そう思ってベッドの方へ歩こうとした時、後方から急にものすごい風が吹いて来て思わず前につんのめった。
「どわっ何!?」
思わず強く目を瞑る。しかし転倒するかと思われた体は、背後からふわりと大きな腕に抱き止められてことなきを得た。
「……レイン先輩?」
「悪い。いつも一人だったから、部屋の中に人がいるということを忘れていた。怪我はないか」
後ろを振り返ればすぐ近くにレインの顔があり、窓が開いているのが見える。なるほど、彼がそれなりの速度で窓から飛び込んできたことにより突風が吹いたらしい。
「あ、はい大丈夫です。ちょっとびっくりしましたけどどうせ転んでもベッドにダイブするだけでしたからね。……おかえりなさいレイン先輩」
彼に抱きとめられたまま体だけをくるりとそちらに向き直し、私はにこりと微笑む。
距離が近いからか、レインが小さく息を呑んだのがはっきりと聞こえた。
「……ああ、"ただいま"」
いつもより心なしか柔らかな表情でそう呟く彼に、ふと思い出すのは彼のステータスのこと。
両親のいない彼にとって、それはどういう意味を持つ言葉なんだろう。
「それにしてもお前、小さすぎるし柔らかすぎるんじゃないか。これ以上抱きしめたら折れそうだ」