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*名探偵コナン* 花になって *降谷 零*

第3章 *File.3*(R18)


「あの」
「何だ?」
「依頼料はきちんと支払いますので、依頼を一つ受けてはもらえませんか?」

安室透として、か。
二人きりの時は、本来の俺に戻る。
何故?
そんなことは俺が聞きたい。
一つ言えるのは、雪乃さんが原因であることだ。
情報の入手経路はまだ不明だが、雪乃さんが降谷零の存在を知っているからなのか、俺の彼女への感情がそうさせているのか?
それとも二つの感情が合わさっているから、なのか?

「では、話を聞かせてもらおうか?」
「お話しすることは何もありません。ただ、一人の女性を捜して欲しいんです。もし捜し出すことが出来たのなら、カノジョの現状とカノジョの家族についても調べて下さい」
「知り合いなのか?」
「ええ」

手渡された紙には、丁寧な字で一人の女性の住まいと電話番号が書いてあった。

「どういう関係か、伺っても?」
「お調べいただいてから、お話します」
「必ず?」
「お約束します」
「では、俺からは一つ質問」
「?」
「長野県警の諸伏刑事とは、知り合いなのか?」
「いえ、知人ではありません。ただ、私が一方的に知っているだけ、ですよ」

目を細めて、少し切なげな笑みをみせた。

「何故?」

此処にいる時には、俺に対しては決して見せない表情。

「何がですか?」

次の瞬間には、元通りのキミ。
あの日から、二人の間には何もない。
彼女が砕けた言葉遣いをすることもなくなった。
完全に、距離を置かれてしまった。
今の俺と雪乃さんの間には目には見えない、誰にも見えないけれど、とても分厚い壁が聳え立つ。
だが、周りの誰にも気づかれてはいない。
それを上手く隠し通している。
良くも悪くも常に俺の言動を意識をしている、雪乃さんが。

「急ぎませんので、お時間のある時に、片手間程度で構いません」
「分かりました」
「宜しくお願いします」

丁寧にペコリと頭を下げると、では、お先に失礼しますと続けて、店を出た。
キミは想像すらしていないんだろうけど、

「いい歳して、振り回されてるのは俺ばかりだよ」

小さな背中を見送ると、独り呟いた。



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