第2章 *File.2*
「も、やめっ……ンっ」
「……」
敵わないとは思っていながらも暴れていた手足は、時間が経つにつれて口付けを深くすれば、それもなくなる。
「……っは、ぁ…ッん…」
「……」
実は魔性の女、なのか?
目を開けば、普段の彼女からは想像も出来ないほどの色気と艶めいた表情にゾクリとした。
こんなにも女性をオンナとして意識をしたのは、何年ぶりだ?
結局のところ、強引にでも何かの理由を付けて、もう一度、俺が彼女に触れたかっただけ。
初対面のあの日、オトコとしての俺が意識をしてしまったから、未だ胸の中で燻り続けるこの気持ちが本物なのかどうかを知りたかった。
今は恋愛に現(うつつ)を抜かしている状況では、立場ではないことは、俺が一番分かっているはずなのに。
「…ちょ、と!なに、ひゃっ」
「全てを吐くまで逃がさないから、覚悟しておけ」
ブラウスのボタンを外し、ハッキリと残るように柔らかな胸元に花を咲かせた。
「ウソ、でしょ?」
「何なら鏡を用意するか?」
自分の胸元と俺の顔を何度も見比べる。
「!」
「それとも、訴えるか?」
「…警察庁、に?」
「!!」
やはり、か。
警察に、ではなく、警察庁。
一般的には有り得ない、出て来るハズがないワードだ。
そう。
俺の素性を知らない限りは。
「何時かちゃんと話すから、もう少し待って。私自身が、まだ信じられない状況なの」
「…ああ。分かった」
その言葉は、本心を告げていた。
茶色の双眸が、今までとは全く違った色をしていたから。
「貴方の本職のことは、誰にも言わないと約束します。だから、色仕掛けはもう止めて」
「それは無理な相談だな」
「…ナンデ?」
「さあな」
「…ソウ、デスカ」
意味深に笑みをたたえれば、眉を潜めてもう諦めたような深いため息を洩らされた。