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*名探偵コナン* 花になって *降谷 零*

第5章 *File.5*


「…零?」
「急に悪いな。出掛ける準備は出来たのか?」
「うん。で、どうしたの?」

その荷物、と、インターホンを鳴らすと直ぐに出迎えてくれた雪乃が、玄関先で首を傾げた。
アポ無しの突然の訪問だ、無理は無い。

「明日、俺も同行することにした」
「…はい?」

貴方、本業のお仕事はどうするんですか?と、見上げる視線が訊ねている。

「たまりにたまっている有給を消化したから、何も問題はない。理由は探偵業にして、ポアロは休んだよ」
「そこまでして?」
「心配だ」
「何が?」
「雪乃はしっかりしているようで、危なっかしい」
「……」

そらされた視線と反論しないところを見ると、自覚がないわけではない?

「それに」
「?」

最低限に抑えた荷物を玄関先に置くと、キッチンでマグカップを二つ出して、お茶の用意を始める雪乃を背後から抱き締める。

「ナンパされたらどうする?」
「それは全くをもって要らぬ心配です。私は実家に帰るようなものよ?」

振り返った雪乃の瞳が、呆れたモノになる。
キミの方こそ、自分の可愛さ具合いを自覚した方がいい。
が、そう言ったところで、きっと全否定されるだけだろうな。

「ナンパはまた別問題だ」

日帰りならまだしも、一泊二日。
子供達が心配だから一度帰りたい。
雪乃としてではなく、三人の母親として言われたのは一ヶ月ほど前。
初盆は全国各地混み合うから避けたいと、彼岸まで待った。
カノジョの知り合いだと告げるよ、と、笑ってはいたが。
実のところ、ナンパは口実。
また、キミの心が押し潰されはしないか?
それに、きっと泣くだろう?
カノジョの記憶があると言うことは、雪乃自身にとっても、大切な家族との突然の別れが来たと同じこと。
一人きりで一晩泣き腫らすつもりだった、んだろう?
上手く泣かせてやれればいいんだが。

「…強引ね」
「そうでもしないと、断るだろ?」
「確かに」
「そこは否定してくれ」
「ご自分の立場を良く理解した上でどうぞ」

前を向いたまま、ふふっと、楽しげに笑みを見せる。
一から説明をしなくても、ある程度の俺の立場とや事情を知っている。
いいのやら、悪いのやら。
本来なら年下のはずが、全くそう思えない時があるのはこれが原因か。


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