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*名探偵コナン* 花になって *降谷 零*

第5章 *File.5*


「お前はどうなんだ?」
「私?」
「雪乃とカノジョの二人の記憶があることに、何の違和感や問題はないのか?」
「多分、生まれた年と場所が違うだけで、中身は二人共が私」
「言い換えれば、こちらとあちらの世界にそれぞれ一人ずつ、雪乃がいたってことか?」
「それが一番近いのかな?一人が二人に分かれていた。って言うよりは、やっぱり私が二人いたって言う方がしっくりくる」
「で、一方は三人の子持ち、か」
「本人的には不思議な感じだけどね」
「だろうな」

雪乃自身は今現在独身で、もちろん未婚。
なのに、カノジョは三回の出産経験を経て、子育ての真っ只中だった。

「カノジョとそこまで年齢差あけなくてもよかったのにって思うけど、まあいっかって」
「何故?」
「カノジョではなく私が、降谷零、貴方に出逢えたから。理由はただそれだけよ」
「!」

不意打ちは卑怯だ。
こみ上げる喜びを表すように、雪乃を抱き締める腕に力を込めた。
雪乃ではなく、もしカノジョと俺が出会っていたら、一回り以上もカノジョの方が年上になる。

「後は、私が結婚して出産したら、その経験を活かせるかなーと」
「誰と?」
「……誰と?」
「何故、そこで直ぐに俺の名前が出て来ない?」
「どれだけの無茶ぶりですか?」

雪乃の身体を回転させて、ムッとしてみせる。
以前、やんわりとこんな話をしたのを思い出す。

「そのつもりは無い、のか?」
「それは私が聞きたい」

遠回しとは言え、あの時いい返事をもらえたことは、勿論覚えている。

「近い将来、俺は雪乃を妻に迎えるつもりだ」
「面と向かって、即答でそんな嬉しいこと言われたら⋯」

驚きの表情が、ゆっくりと紅く染まるのを見届ける。

「言われたら?」
「地の果てまで追い掛けて行くけど、いいの?」
「…くっ」

そっち、なのか?
てっきり、本気にしていいの?とか、期待してしまうけどいいの?と、喜びの返答かと思いきや。
予想外の斜め向いた返答に、堪え切れずに吹き出してしまった。

「……笑うトコ?」
「笑うに決まってるだろ。それに、だ。俺は地獄へ落ちるつもりはないぞ」
「…あー、表現を間違えた?」

気まずそうに、視線をさ迷わせる。


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