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*名探偵コナン* 花になって *降谷 零*

第4章 *File.4*


「っ!」

湯船で抱き締めた腕を解いてこちらを向かせれば、潤んだ瞳を見せまいと顔をそらす。

「全て吐き出せ。 俺が全てを受け止める」

雪乃の過去を知った時から、ずっとそう思い、願っていた。

「どうして…」
「雪乃を愛している。それが唯一の応えだ」
「零…」

真っ直ぐに絡み合った瞳から涙が溢れ白い頬を伝い落ちるのを、じっと見つめた。
ただ、その涙がとても綺麗で。

「今は泣きたいだけ、泣けばいい」

涙の理由がアイツの所為であっても、そうでなくても。
独りで泣かれるよりは、余程いい。

「…ごめん、なさい」
「雪乃が謝ることは何も無い。たくさん泣いて心が落ち着いたら、また何時ものように笑ってくれ」
「…ありがと」
「!」

流れる涙を拭いもせずに礼を述べると、重ねられた唇。
同時に細い腕は、俺をきつく抱き締めた。
雪乃は俺のモノだ。
良くも悪くも恋愛には慣れていなくて不器用で、基本照れ屋で言葉もまだまだ足りないが、こうして感情を素直に表に出されると堪らなく愛しい。
俺は愛されているのだと、心も身体も熱くなる。
もう、お前以外の誰も愛せないよ。
広いバスルームに響く、激しいキスの生々しいリップ音を聞きながら、そう確信した。


「…雪乃?」
「うん?」
「こっちを見ろ」
「…ムリっ」
「何故?」
「…ま、眩し過ぎて」
「はっ?」
「自分がイケメンだと、自覚してないんですか?」
「……」
「よって、直視出来ません」
「くっ」

想定外の返答に、吹き出さずにはいられない。

「やっぱり笑い上戸でしょ?」
「その件に関しては前にも否定したはずだ。お前は俺の姿形が変わってもいいのか?今更?」
「そ、それを言われると…」
「では、慣れろ」
「だから、ムリだって言ってるのに!」
「本当は一緒に過ごす時間を増やすのが、一番手っ取り早いんだが」
「それだけは絶対にダメっ」
「…どういう意味だ?」

思わず、唸るように問いかけた。

「今の貴方にこれ以上の危険要素は増やさせない。私の所為で精神的にも物理的にも零の負担を増やすのだけは、絶対にイヤなの」
「…我慢する、と言う意味か?」
「今は我慢する」
「どうしてこういう時だけ、有無を言わさない」


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