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*名探偵コナン* 花になって *降谷 零*

第4章 *File.4*


「…雪乃を頼む」
「君に頼まれなくても、必ず僕が雪乃を幸せにしますよ」

まだ、少し先の話にはなるが。

「じゃあな」
「ええ」

彼は最近、今の職場を辞めた。
あの女性とも別れ、実家へ帰り、家業を継ぐそうだ。
雪乃との再会で、あれから彼の中でずっと擽っていた何かが吹っ切れたのだろう。
元凶はあの女性でもあるが、彼自身の驕りでもあったと自覚して反省もした。
だからこそ、また会いに来た。
だが、きっと、これでよかった。
一目会ってしまえば、彼は雪乃に何を告げ、何をしたか。
想像に容易い。
玄関の向こうまで元カレの後ろ姿を見送った後、部屋の戸締りをして、雪乃が待つ場所へと向かった。



「何してるっ!」
「…禊」
「風邪ひくだろ!」
「わっ!」
「そこで待ってろ!絶対に出るなよ!!」

夜景が綺麗な、あるホテルの一室。
待たせていた部屋にはいないからバスルームのドアを開けば、湯けむりどころかシャワーから流れるのは、真水。
幸い湯船には温かいお湯が張ってあったから、冷え切った身体を無理矢理湯船に押し込み、一度バスルームを出た。

「ったく、やることなすこと極端だな」

俺に迷惑を掛けると思えば、別れを考え。
元カレのことで思い悩めば、真水で禊をする。
カノジョの40数年分生きて来た記憶が完全にあるからこそ、普段は精神的に余裕を見せても、こういう時には色々と深く考え過ぎて不安定になる。
脱衣場で濡れた服を脱ぎ捨て、さっさと洗髪して身体も洗ってしまうと、広い湯船に割り込んだ。

「…ごめん」
「気持ちは分かるが、無茶し過ぎだ」
「…うん」
「泣きたい時は我慢せずに泣け。但し、隠れて泣くなよ」
「……」
「返事は?」
「…貴方も大概無茶言うてますけど」
「…イントネーションに違和感がない」
「やろー?服部君と和葉ちゃん思い出さへん?」
「…無理をするな」
「…泣かさんといて」
「俺は雪乃を泣かせるために来た」

いっそのこと、大声を上げて泣いてくれた方が安心出来るのに。


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