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*名探偵コナン* 花になって *降谷 零*

第4章 *File.4*


「相変わらず、地味な女ね」
「貴女みたいなオンナよりは、随分とマシだと思いますよ」
「なっ!」
「ずっと言いたかったんですが、私は雇われの身で、此処は私の店ではありません。マスターに失礼ですから、止めて下さい。私にとって、こんなにも素敵な喫茶店は、職場は、世界中の何処を探しても見つかりません」

街中にひっそりと、小さくても。
馴染みのお客様がたくさんいて。
美味しい珈琲に、温かくて美味しい食事。
マスターも頼りになって素敵な人柄で、明るくて可愛い梓さん。
安室透はあっという間にすっかりしっかりこの店に馴染み、その人柄とちょーイケメンなのもあって、今やすっかりちょーモテ男で人気者、ですが。
実はとんでもない最低男だった彼氏と別れて仕事を辞めたばかりの頃、深い事情は話さなかったけど、通いつめるかのように毎日此処に来て、変わらない美味しい珈琲と、私を見守るかのような二人の優しさに、一体どれだけ励まされ癒されたか。
そして、私の中の気持ちが随分と落ち着いた頃。
リハビリがてらに此処で働かないかとマスターに勧誘されて、現在に至る。

「フン。真面目だけが取り柄のつまらない女」
「あの頃よりは、ずっと幸せです」

以前勤めていた職場はそれなりの規模の会社だったから、確かに今は給与が下がった。
だけど今は、心身共にとても充実した日常を送っている。
仕事を辞めてから突然決めた引越しに使っただけの貯金もまだ残ってるし、今も毎月少しずつ増やしている。
貯金とは、ある程度目標を達成すると、もっともっとと欲張って頑張れるんだから不思議だ。
貯めてどうするんだ?と、訊ねられても困るけど、お金だけはあっても困る物ではないのは確かだし、突然の辞職と引越しみたいに、人生何時何が起こるか分からない。
私の身に、家族の身に。
それが現実だ。
リアルな世界は、今の日本は、優しさ以上に、世知辛くてとても厳しい。
時々はこんな嫌な客も来るし、セクハラ発言をするような男もいるのは仕方の無いこと。


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