第3章 *File.3*(R18)
「っ!」
まだ一度もイかせてなかった所為もあるのか、本人は無自覚だろうが、焦らされた分だけ、ナカの熱さと締め付け感が半端ない。
これは、こっちも辛いな。
オンナを抱くのはもう、何年ぶりだ。
数えるのも面倒臭いぐらいだ。
それも伴ってか、感情を抑えきれない。
頭と理性が追いつかない。
久方ぶりに現れたオトコの本能に、抗えない。
全く、どうしてくれるんだ。
「一度、イクぞ」
唇を離して告げるなり、ゆっくりと律動を始める。
「……っ、ん…」
手のひらが固く握り締められたままの細い腕が、律動の度に洩れる声を抑えるために、雪乃の口元を覆い隠す。
その仕草がヤケに色っぽい。
「……雪乃」
衣服を全て脱がせてみれば、想像以上の艶やかな肢体に、白い肌は繊細でいて敏感だ。
「…な、に?」
「名前を、呼んでくれないか?」
お前が好きなように。
薄らと開いた瞼が一度大きく揺れた後、伸ばされた細い指先が初めて頬を撫でる。
「零、くん」
「!」
躊躇いなく呼んだのはゼロではなく、零。
本来の俺の名前。
「って、呼んでも?」
「名前だけでいい」
「…零、愛してる」
今まで見た笑顔で、それは一番綺麗で。
満ち足りた幸せの中に艶やかさを含んだ、柔らかな色を映し出す茶色の瞳。
それはまるでずっと溜め込んでいた想いがたった今、一度に全て伝えられたかのようにも思えた。
きっと、物語の中の一人として俺と出逢ったカノジョの想いと、今現在この世界で俺と出逢った雪乃の想いの二人分だ。
「……零?」
「愛してるよ、雪乃」
そのまま唇を重ねて深くしながら、律動を再開した。
「起こしたか?」
「!!!!」
頬に掛かる髪を避けると、ぼんやりと開いた瞳が一瞬にして見開かれ、同時にぼふんっと音がしそうなほど真っ赤になった。
まるで初めてのような、素直な反応だな。
オトコの俺としては、嬉しいものだが。
「逃がさないよ」
「そ、そういう問題じゃ…」
俺から離れようと、わたわたと身体を動かす。
「この手を解いたら、出て行くだろ。理由はどうであれ、間違いなく」
「だっ、だって…」
「もう遅い」
「…何が?」
腕枕を解いて、雪乃の上に跨る。