第1章 桜舞う、出逢い
弔くんの腕の中で顔を俯かせていると、何だかまた周りの女の子たちがザワザワしだす。
何だろ…?と顔を上げようとするとふと、首に腕が回る。
「…よォ、。
今日も死柄木とヨロシクやってンのかァ?
ちょっとは俺にも構ってくれよォ?」
『…あっ、荼毘先輩!おはようございます!』
首に腕を回して肩を組み、間近で綺麗な蒼い瞳を細める荼毘先輩に気付くとニコッと笑って朝の挨拶をする。
荼毘先輩は一つ上の3年生の先輩。
弔くんと仲良しでよく一緒にいるところを見る。
そしてこうして私にもよく構ってくれる。
荼毘先輩は昔に患った大火傷の痕が痛々しくて、たくさんのピアスに少し怖そうな雰囲気だけど、お顔がとっても整っていてカッコいいから後輩、同級生、先輩関係なく女の子たちから大人気の先輩。
だから荼毘先輩が現れると周りの女の子がいつもきゃっ♡きゃっ♡とはしゃぎだす。
「…おい、荼毘。から離れろ。」
「そーいうお前もいつまでに
くっついてンだよ。お前こそ離れろよ。」
『ぁ…っ、ぁの…弔くん…荼毘先輩…っ。』
私の腰に腕を回してる弔くんと首に腕を回している荼毘先輩との間に挟まれながら言い合いをする二人にあわあわしてしまう…。
すると弔くんと荼毘先輩の頭にポンッ、ポンッ、と軽く何かで叩かれる音が響く。
「こーら。お前ら、なに廊下の真ん中で
女の子困らせてンの…。」
声のする方へ視線を向けると短い眉を顰めて出席簿を持っている迫先生が立っていた。
さっきのポン、ポン、という音は迫先生が出席簿で弔くんと荼毘先輩の頭を叩いた音だったんだ…。
「…ほらほら〜、から離れる、離れる。
こーんな可愛い子、困らせちゃダメだろ?
余裕のねェ男はモテねェぞ?」
迫先生が私から弔くんと荼毘先輩を引き剥がすと、出席簿で自分の肩をトントン叩きながら、切れ長のくっきりした二重まぶたの茶色の瞳を細めながら戯けたように言う。