第1章 桜舞う、出逢い
「ちょっと散らかってるケド…どうぞ。」
社会科準備室に着くとドアを開けてスマートに迫先生が中へ促してくれる。
『ありがとうございます!失礼します。』
一度頭を下げてお礼を言ってから迫先生の手を取って社会科準備室の中へと入る。
準備室の中へ入ると迫先生のいい匂いがより濃く感じられる…。
散らかっていると言っても全然綺麗な方で、ところ所に社会科や歴史の本が積み重なっていたり、プリントの山があるくらいで…。
「…ソコのソファーにでも座っていて。」
準備室の奥には迫先生がお仕事する仕事机が置いてあって、真ん中にはローテーブルとソファーがあり。
お部屋の奥には小さな冷蔵庫や食器棚、ケトルなども置いてある。
そこから迫先生がマグカップを二つ取り出して、ケトルにお水を入れてお湯を沸かす。
「コーヒーしかないンだけど…飲める?」
『ミルクとお砂糖を多めに入れて
頂ければ飲めます!』
「りょーかい。ちょっと待っててね。」
振り向きざまにこちらを見ている先生に微笑んで言えば、茶色の瞳を細めて優しく微笑む迫先生。
そしてローテーブルの上にコト…、と迫先生らしいシンプルなマグカップが二つ置かれる。
「…どうぞ。」
『ありがとうございます。頂きます!』
マグカップを両手で包み込むように持つと、ふー…ふー…と小さく息を吹きかけながらそっと飲む。
『…ん!ミルクたっぷりで甘くておいしいです!』
「お…、お気に召したようで良かった。」
私の隣に腰掛けて、長い脚を組みながら同じようにマグカップに口を付ける迫先生。
迫先生のコーヒーはブラックみたいで、隣からは苦そうな大人なコーヒーの香りがする。
隣の迫先生のお顔をそっと横から見つめる。
ス…っと筋の通った鼻筋に切れ長のぱっちりした二重まぶたの茶色の瞳は今は少し伏せられていて…。
その上、さっき少し気崩されたワイシャツと緩められたネクタイが相まってなんだかとっても色っぽい…っ。