第6章 春高予選
時は経ち、春高予選前日。
練習を終え、キャプテンである二口さんが皆に声をかける。
二「新チームになって初の公式戦だ。まー正直プレイに不安も残るし、安定感もあるとは言えない。でも、それぞれがやれることはやって来たし、明日はそれを存分に出すだけだ。勝ちに行くぞ」
二口さんの姿は堂々としていて、もうすっかりキャプテンが板についた。頼もしくてかっこいい。
十分に指揮の高まった皆は明日に備え、続々と帰っていっている。
でも、浮かない顔をしてまだ体育館に残る人がいた。
「どうしたの?黄金川君。緊張してる、?」
黄「そりゃ、まぁ。皆より出来てないのに、試合に出させてもらえるし。なんで俺がーって思っちゃうよね。身長くらいしか取り柄ないし。」
「そうかな?春からずっと黄金川君のプレイ見てきたけど、あの頃より格段に成長してると思うよ。努力してるんだなって伝わった。それに、身長って凄い武器だよ。」
黄「そーかな?俺ってすごい?そっか、そーだよね!」
「凄いよ!だから、堂々としてたらいいと思う!」
黄「うん!ありがとう凛ちゃん!俺頑張るっ!」
「楽しみにしてるね!」
吹っ切れた顔の彼が帰っていく。その様子を見ていた舞さんが
舞「選手のメンタルケアも大事なマネージャーの仕事だから。グッジョブだよ凛ちゃん!ありがとう。」
って褒めてくれるから、かなり嬉しかった。
舞さんと話していた私は大事なことを思い出し、二口さんを探し始める。
「舞さん!あの、二口さんって何処にいるか分かりますか?」
舞「え?多分もう帰ったんじゃない?」
「そーですか、あの、私ちょっと走って追いかけてみます。」
舞「なになに急ぎ?戸締りしとくから行っておいで。」
「すみません!ありがとうございますっ!!」
舞さんと別れた私は校門に向い急いで走っていく。
舞(んー、あの表情だと、凛ちゃんも二口に脈アリっぽいな。もう早くくっついちゃえばいいのに。)
校門の側につくと、青根さんと別れて歩き出そうとしている二口さんの姿が目に入る。私は急いで声をかける。
「待って!二口さん。」
声に反応し、止まってくれる二口さん。
二「急いでどした、凛ちゃん。」
「あの、渡したいものがあって。」