第14章 それぞれの願い
痛みが引いた訳じゃないし、捻挫が治った訳でもない。でも、堅治くんに試合に出ないっていう選択肢は無い。
救護室を出てコートに戻ると、青根さんが頑張ってくれたようで、点差が2点差まで縮まっていた。それでも烏野は12点でうちは10点だ。
二「監督!テーピングして貰ってきました。出させて下さい」
監「あぁ。やり切って来いよ」
二「はい」
まだ痛々しい足を引き摺ってコートに走っていった
二(アドレナリンのお陰か、今は大して痛くない。勝つか負けるかも今はどうでもいい。目の前の一点を確実にとる)
二「青根、ありがとな」
青「俺らが勝つ」
二「そーだな」
テーピングのお陰で先程よりも動けるようになった堅治くんが点をさらに縮め同点まで追いついた。先に烏野にマッチポイントを取られてしまったが、何とかまた同点に追いつく。
苦しいデュースの戦いになった。でも、春高予選で失敗続きだった黄金川くんのツーアタックが決まり、16対17で逆転することが出来た。次決まれば、全国だ。
救護室から戻った私は、観客席に戻り、要くん達と応援をしていた。次の点を決めて欲しい一心で、気づけば大きい声で
「もう一本!!」
そう叫んでいた。
次の瞬間、烏野の田中さんが打ったスパイクを青根さんと堅治くん、黄金川くんの3枚ブロックで止めた。
ピッピィーーー
試合終了のホイッスルがなる。
去年より更に強くなった烏野を伊達工が破ったのだ。
信じられず、呆然と立ち尽くす選手が大半を占める中、堅治くんと青根さんは、お互いに抱き合い涙を浮かべていた。
茂「おっおぉぉぉ!!」
鎌「嘘、だろ…。マジでやりやがった」
笹「…すげーよ、ほんと」
皆泣いていて収拾がつかない。
私も目に涙がいっぱい溜まっていた。でもここで私が泣いちゃいけないような気がした。選手でもないし、マネージャー歴も浅い私が泣くのは違うような気がして、要くん達に背を向け、涙を隠すように歩き出そうとした
二「凛!!!」
2階の観客席にいる私に1階のコートに居る堅治くんが声を掛ける。振り向くと、満面の笑みを浮かべた彼が
二「ありがとな!!」
それだけを告げた。でもその言葉に彼の思いの全てが十分すぎるほど、詰まっていた。私は堪らずしゃがみ混み、泣いてしまった。喜びと感動の涙を