第14章 それぞれの願い
☆二口side
嬉しくて、嬉しくて夢なんじゃないかって思った。これまでずっと悔しい思いをしてきた。先輩に託された思いを繋ごうと頑張ってみたけど、初めは上手くいかなかった。春高予選の後、練習しても練習しても全国は無理なんじゃないかって苦しんだりもした。でも、無駄でも無理でもなかった。
確かに、俺一人の頑張りでは、来れなかった景色。皆で掴んだ頂きの景色。俺ら選手だけじゃない。監督もコーチも滑津も凛も要さん達先輩も皆の支えがあってここまで来れた。
烏野に勝った瞬間の高揚を俺は一生忘れないと思う。多分青根も。ブロックの手にボールが当たる感触。今まで嫌という程練習したブロックが本番に上手くいった事が何より嬉しかった。嬉しさのあまり青根と抱き合って泣いたのは、今思うとちょっと恥ずいな。
凛とも感動を分かち合いたくて観客席の方を見ると、体育館から出ていこうとしてた。何で今なんだよって思って、呼び止めたらすげー泣きそうな顔してた。今までずっと試合の後も俺らと同じくらい悔しい思いをしてきた分、同じだけ嬉しかったんだろーな。俺らの勝利のために、強豪対策のデータ集めてくれるくらいだもんな。
言わなきゃいけねー事があるんだ。顔見たら1番に言おうと思ってたこと。
「ありがとな!!」
青根と抱き合った後、変に冷静になったせいか照れくさい。ぶっきらぼうだったかもしれねーし、上手く伝わったか分かんね。観客席にいた凛が少し驚いた顔をしてしゃがみ込むから表情が見えなかった。
テレビ局も来てる中、叫ばれたのが嫌だったか、?
心配に思って、凛の様子を見ていた要さんを見る。こちらに気づいた要さんが泣きそうな、嬉しそうな顔で笑うから、ちゃんと凛に伝わったようで安心した。