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【ブラクロ】空っぽの先

第2章 魔導書


「な、なんだこれ!みえない!」

男目掛けて放たれた催涙弾は、着実に彼の視界を奪うことに成功した。
その隙に私はオロオロとする彼に近づき、弱めの設定でスタンガンを放つ。

「がっ」

男は意識を失うほどではないにしろ痺れで動けなくったようで、その場で伸びてしまった。

「しょ、勝者ーーラルカ!」

よし、やりきった。
周囲では「一体何が起きたんだ?」とざわめきが起きている。
魔法が全てのこの世界では催涙弾もスタンガンも見た事がないだろうし、何が起きたのか理解できないのも無理は無い。スタンガンに至っては持続時間が短すぎて使った瞬間に消えてしまったし、そもそもよく見えなかった人も多いだろう。要するにユノくんやアスタくんの勝利と違って絵面が地味すぎた。もしかすると急に対戦相手が呻き出してその隙に私がお腹を殴っただけにしか見えなかったかもしれない。
……問題は評価してもらう対象である団長たちにも理解出来ていなかった場合、果たしてこれで評価してもらえるのかという問題が生じること。

「まあとりあえず勝ちは勝ちだしやれることはやったはず……」

対戦を終え、私は待機スペースの方へ戻って行った。





試験番号1番から順に、結果を言い渡されている。
各受験者ごとに「自分の団に欲しい」と思った団長たちが手を挙げていく形式だ。受験者は手を挙げた団長の団の中から所属したいところを選ぶ。
もちろん誰にも手を挙げて貰えない人もいた。現実は思ったよりシビアである。ユノくんは全員が手挙げてたけど。

「わ、アスタくん暴牛行くんだ……いいなー!」

誰にも手を挙げて貰えないかと思いきや、ヤミ団長と何やらゴタゴタ会話して結局所属が決まったようだった。羨ましい。
でも確かにアスタくんは1歩も飛べなかったけど戦闘試験は凄かったし、何よりあのユノくんがライバルと認める男の子だからなあ……きっとすごいんじゃなかろうか。五葉のクローバーとか四葉より聞いたことないし。

「さて次……ラルカ!」

来た!

「はい!」

私は大きな声を上げて前に進む。ドキドキと心臓がうるさい。これで私の所属が決まるんだ。
ヤミ団長手を挙げてください、お願いしますお願いします……。

「入団を希望する団長は手を」

その言葉に合わせちらほらと数人の手が挙がる。
ヤミ団長、は……。
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