第3章 臆病ものたち
「おーいラルカ! オマエも来いよ!」
そんな話をしているとマグナ先輩から私にも声がかかる。アスタくんが反魔法でマグナ先輩の魔法を吹き飛ばしたらしい。場は大盛り上がりだ。
中央に引っ張り出されフィンラルとの会話は有耶無耶になってしまったが、話す機会なんてこれからいくらでもあるのだし、焦る必要は無いだらう。
「せっかくだしオマエもなんかしてみろよ」
「無茶ぶり……じゃあこんなものはどうですか?夢の具現化!」
私は野球ボールを生成するとマグナ先輩の方に投げる。
続いてグローブを生成してマグナ先輩とアスタくんに投げ渡した。
「うぉ、なんだこれがオマエの魔法か?」
「はい。これ私の故郷では結構メジャーな遊びなんです。野球って言って…マグナ先輩のそのバットで遊ぶのにちょうどいいと思います!」
「ラルカって物知りだよなー! どうやって遊ぶんだ?」
「それはね…」
話していればゾロゾロとほかのメンバーもやってくる。
人数分のグローブを渡して、私たちは野球を楽しんだ。その晩は大いに盛り上がった。
「ラルカ・マーリウ……どっかで聞いた名前なんだよなー」
そんな中、フィンラルが首を傾げていたのは知る由もないことである。
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翌日。
まだ慣れない環境だからかあまりよく眠れず、早朝に目が覚めてしまった。しかし時間は早くとも目が覚めればお腹が空いてしまうもの。仕方なく朝ご飯を食べに来ると、そこには先客が。
「おーラルカか。オハヨ」
「おはようございますヤミ団長」
豪快にパンを口に放り込んでいる団長を見ながら、今度カップラーメンとか教えてあげようかなあなどと思いつつ正面の椅子に座る。
「ところでオマエさあ、結局何でウチに来たかったワケ? 自分で言うことじゃねえけどウチ人気ないよ?」
まさかフィンラルを追ってきたとストレートに言うわけにもいかない。
私はその問いにしばらく考えてから口を開いた。
「……一緒に仕事したいと思う人がいるからです。職場選びって職務内容とか給料も重要ですけど、同じくらい同僚がどういう人間かって大事ですよ」
「ふーん?」
間接的に暴牛の団員を褒めるようなことを言ったからだろうか、団長は少し嬉しそうにニヤリと笑う。