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【ブラクロ】空っぽの先

第2章 魔導書


目の前に困っている人がいたら少しも悩まずに助けようとする。そこに打算も理由も必要なく、ただ助けたいから助けている。やはりこの人の本質は何一つ変わっていない。
きっとこんな性格では損してばかりだろう。でも、私にはやはり好ましく思える。

「……あなたの魔法は優しいですね」

思わずそんな言葉が口をついて出してしまった。フィンラルは不意をつかれたようで一瞬驚いた顔をする。

「え、そ、そうかな。オレなんて足扱いされるばっかりで戦闘は全くだよ。後輩にもナメられてるし」

頭をかきながらあはは、と照れを誤魔化すように笑う。軽い大人になってしまったのかと思ったが、その姿を見て存外素直な人だと思った。

「でも貴方が暴牛にいるのは団長に何かしら認められたからですよね? 人ってどうしてもできない事に目が行きがちですけど、もっと自分のいい所に目を向けて自信を持ってみてもいいと思うんです」

「……」

彼は面食らった顔をして固まっている。向こうからしたらほとんど初対面なのに色々話しすぎたかもしれない。
でもあなたの優しさで救われた人がいることも、忘れないで欲しかった。

「私、暴牛に入ります。それであなたを尊敬する最初の後輩になりますから、まっていてください!」

それだけ言うと私は灰色の空間へ飛び込む。彼が背後で、ありがとうと呟いたのが聞こえた。





「とはいえどうやってこの試験を乗り切ろう」

その後私は1人の男性と対峙していた。
彼が使うのは氷を操る魔法だ。さっき見ていたからわかる。氷が飛んでくる可能性を考えるとなるべく遠距離で戦いたいところ。
しかし手で持てる範囲しか作れない私には飛び道具となると手裏剣だのチャクラムだのが限度で、そんなものは作ったところで扱いきれない。それこそ拳銃が出せれば1発で終わるだろうがそれだけは絶対に駄目だし。それ自体に嫌悪感があるのというのが前提だが、そうでないにしても実弾では確実に怪我をさせるし最悪死ぬ。

「そうなったら無理にでも近寄ってスタンガンで気絶させるのが1番か」

私は魔法でプール用のゴーグルを生成して頭に装着する。

「変なもんくっつけて何してんだあんた? まあ別になんでもいいが、やる気がないならこっちから動かせてもらうぞ! 氷魔法ーー」

「『夢の具現化』!」

相手の魔法が終わるより先に、私は「それ」を投げ込んだ。
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