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【ブラクロ】空っぽの先

第2章 魔導書


その後もいくつか魔力を測るような試験があったが、変に目立たないように気を付けながら突破して行った。
そして。

「戦闘試験か……」

最後の試験は戦闘能力の高さを見るようなものらしい。
戦闘向きでは無い魔法使いも存在しているとはいえ、やはり騎士と言うからには戦いの技術はある程度必要なんだろう。
自分の順番を待ちながら、ユノくんが華麗に魔法を放ち相手を吹き飛ばしているのをぼんやりと見ていた。つくづくなんであんな果ての村にこんな人がと思う。

「……ちょっとトイレ行きたくなってきたな」

まだ自分の番まで時間がある。移動するなら今のうちだ。







「で、迷ったと」

周囲を見るも似たような壁が続くばかりの廊下で、どのあたりが自分の待機所であったかわからなくなってしまった。
Go○gleマップとか出せないかな。いやこの世界GPSないから無理か。21世紀の日本ってほんと便利だったんだなあ……。
しかし困った。このままでは自分の番が来てしまう。当たって砕けたならまだしも当たる前に脱落はいくらなんでも情けなさすぎる。

下手に動くのも……と思案していると、前方からカツカツと足音が響いた。

「あれ、受験者の子? どうしたのこんなところで」

「……! フィンラル!」

「どうしてオレの名前!? って君さっきの」

フィンラルは合点がいったというように手を叩く。
そこはナンパのシーンじゃなくて10年前の出来事の方を思い出して欲しかったんですけど……。
まあ今日はメイクにヘアセットまでバッチリ決めていてもはや普段とは別人だし、それ以前に10年もしているのだし分からなくても無理は無いが……。
もし、あの出来事自体をこの人がとっくに忘れてしまっていたらと思うと、怖くてそれ以上踏み込んだことを聞けなかった。

「えと、会場ってどっちか分かりますか。もうすぐ私の番なんです」

「分かるけど、まだ受けてないの!? 随分遠くまで来ちゃってるし歩くと間に合わないよ!」

フィンラルはその手から人が通れるくらいの大きさの灰色の楕円を作り出す。

「さ、これを通って早く行って。戦闘で評価されないと入団は厳しいよ」

「ありがとうございます……!」

目の前に生み出された堕天使の抜け穴はまるであの時の再現のようだ。
思えばあの時も私は道に迷っていて、この人はそんな私を躊躇なく助けてくれた。
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