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ネジを弛めたサドルに跨がる瞬間【弱虫ペダル】

第8章 箱学自転車部は今日も平和です【泉田】


「新開さん、急に呼び出してどうし…」
「え、やっ、ちょ…」
「悪いな塔一郎、部の士気に関わるからって寿一がさ。マネージャーとは仲良くやってもらわないと。も話があるみたいだし」

わかってるけどこれはちょっと早すぎというか心の準備も言葉の準備もできていない。寮に帰ってすぐだったのか、まだ制服姿の泉田くんが息を切らしてそこにいた。走ってきたのかな。汗でシャツが身体に張り付いてよりいっそうそのラインが浮き彫りになる。ムラムラした。
一瞬みとれて頬が緩んだ。けどハッと我に返った途端逃げ出したくなって思わず鞄を抱えて立ち上がる。けど、そんな私を引き止めたのは他でもない泉田くんだった。

「待ってください!僕もさんに話があります…」
「や、やだ、待てなっ」
「逃げんなバァカ」
「じゃ、俺達はこれで」

恥ずかしいよ。恥ずかしいでしょうよ。だって私が伝えなきゃいけない事ってつまり告白だし、それを周りは知っていて気をきかせてるんだもの余計恥ずかしい。東堂はなんか笑ってるし荒北はツマンネェって怒ってるし福富は相変わらず無表情だし、オイ新開、バキュンじゃねーぞコラ。

「さん」
「は、はいっ」
「僕は、あなたが好きです」
「えぁっ!?の、その、」
「だから聞きます。さんはどういうつもりですか」

隣に座って、皆が見えなくなると突然告白されて動揺した。自分が言わなきゃいけない一言を奪われてこの先なにを話したらいいのかわからない。ドキドキして居たたまれない。

「どういう、って…」
「正直、僕は多少なりとも期待してます。けど本当は違うんじゃないですか?」
「えっ、と…」
「質問を変えます。僕の身体に触れて、どんな気持ちになりますか」
「ムラムラします」
「…」
「あ、じゃなくて、違うの、いや違くない、けど、」
「ハァ…もう、なんなんですか…」
「手の、やり場に困る…」
「はい?」
「泉田くんの体が素敵すぎてずっと触れたくなる。今もそう。本当は生身で触れたくてたまらない」
「体が目当てなんですね…」
「そうだけど、違うよ。ここまで努力して作り上げる泉田くんだからこそであって、その…」
「じゃあ、僕があなたに触れたいと言ったら、触れさせてくれるんですか」
「いいよ…触って…」
「またそんな冗談っ…」
「泉田くんならいいの!」






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