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ネジを弛めたサドルに跨がる瞬間【弱虫ペダル】

第8章 箱学自転車部は今日も平和です【泉田】


結局その日は一切目も合わせてくれなかった。泉田くんは先に帰ってしまうし、いつもは皆の後で並ぶ肩がないというのは凄く寂しく感じてしまう。

「で、何があったの?」

俺で良ければ聞くよ。そう言って新開くんに肩を叩かれたら、どういうわけか涙が溢れてどうにもならなくなった。持ってたタオルで顔を覆って、目の前が見えないから何度か躓いて、そんな私の腕を掴んで転ばないように気を使われる。
なんか変に視線を感じたのはそれに皆が気づいたからだ。何泣いてんだバァカと言われ、そんなに大事だったのかと心配され、やむを得ず近くの公園のベンチに座る事となり、ぽつぽつと今日泉田くんとあった事を話したはいいけど。
何故かバカにされ笑われた。

「そりゃあが悪い」
「いつかこうなるんじゃないかと思っていたが」
「どういう事よ…」
「バカかオメー。あいつも男だっつー事だヨ」
「知ってるよ!私だって別に誰彼構わずってつもりはなかったし…」
「ま、が生粋の筋肉フェチ故に逆に泉田も不安になのだろうな」
「不安て何?てゆうか、なんか手がムズムズしてムラムラするんだけど。これが気持ちのやり場に困るってこと?」
「それは手のやり場じゃないか?」
「じゃあ気持ちって何!?」
「要は、が塔一郎のどこを好きかってことだよ」
「どこって、全身?」
「おまっ、そこは全部っつえよ」
「あーもーわかんない!!同じことでしょ!」
「まったく、これだから恋愛初心者は。天然とはバカと紙一重なのだな」
「なんのアドバイスにもなってないんですが?」
「泣くほど好きなんだろう?」
「好き、ですね…だから触りたいし、我慢もしてる」
「我慢できねー結果がこれだろォが」
「ケツ筋触らせてなんて言えないでしょ!?」
「…」
「とにかくそれを塔一郎に伝えたらいいよ。あいつもかなり気にしてたみたいだから」
「…うん。え、ケツ筋触りたいって?」
「、俺達の貴重な時間を返してくれないか」
「え」

結局的確なアドバイスをくれたのは新開くんだけだ。最終的には呆れられたけど、どうするべきかはわかってる。うん、わかってる。




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