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ネジを弛めたサドルに跨がる瞬間【弱虫ペダル】

第4章 距離感 【巻島 甘】


学校で会えば時々話し込んだりもする。昼休みを二人で過ごすこともある。けどそれは付き合う前となんらかわりない日常であって、わざわざ恋人にならなくてもできる事だ。告白した以来好きって言ってないし言われてないし触れる事もない。まさに友達そのものだ。

明日。明日、この先どうするのがいいか、本当に話し合ってみよう。
別れるにしろ、現状維持にしろ。そうだ、裕介君にもお弁当を作ってあげよう。学食飽きたって言ってたし、自分のも作るからそのついでに。

そうと決まれば明日は一緒に食べようとメールしとかなきゃ。そう思って、風呂上がりで髪を乾かさないまま自室に戻る。いつぶりかもわからないメールに少し緊張しながら画面を開くと、先に裕介君からメールが届いてた。

『起きてる?』

30分程前だ。お風呂入ってた、と送ると返ってきたのは電話だった。

「もしもし?」
「出てくるショ」
「え?」
「今、家の前にいる」

驚いたなんてもんじゃなかった。だって、裕介君が会いに来るなんて初めてだったし、家の場所も簡単にしか教えてない。
とにかく待たせちゃいけないと思って、直ぐ様着替えて外に出る。
門を出るといつもの自転車に跨がって、軽く手を揚げてヨッ、て。本当にいた。裕介君がいた。

「ど、どうしたの?」
「ちょっと友達んち寄った帰り」
「そっか…びっくりした」
「時間あるなら少し話そ?」
「うん。あ、中入る?」
「いぃや、さすがにこの時間はヤバイっショ」
「あぁ、うん、ヤバイ」

アハハっ、なんて笑ってみせたけど上手く笑えてなかったかも。今の今まで裕介君の事を考えてたけどそれはちょっと逆の気持ちで。わざわざ会いに来てくれたのが申し訳なくて仕方ない。






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