第11章 月夜の華炎③【セイヤ】R18
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凡そ1月ぶりにセイヤと満足するまで愛し合ったアリスは屋上に流れてくるもう幾分涼しくなった夜風に目を細めながら彼の広い胸元に頬をすり寄せていた。
病室での危機一髪の "珍事" を振り返れば
もうあんな思いは懲り懲りだと 2人で軽口を言い合い、笑い合った。
ドォォォォォン
『────綺麗』
「そうだな──…」
『もう……夏も終わりなんだね…』
儚くも感じる夏の終わり──…
締め括りには相応しい夜だとアリスは思った。
屋上に寝そべって大輪の花を頭上に仰ぎ見ながらふと、その時何故かホムラの画集にあった「熱情」というタイトルの絵が彼女の脳裏に浮かびあがってくる。
その情熱的な色彩が、この夏の終わりの美しい火花と共にアリスの中で淡く散って行くのを感じた彼女は──…心の中、そっとそれを友人に詫びた。
(ごめんね……ホムラ)
───気持ちには応えられずとも、彼とはこの先も "いい友人" でいられるだろうか?
(そうあって欲しい…)
そしてこんな都合のいい事を考える恋人を、セイヤは…そしてあの自由を求める友人は、許してくれるだろうか?
そんな事を考え、アリスは隣のセイヤを仰ぎ見る。
この人は 幼い頃に助けてくれた憧れの人。
手が届かないと思っていたその人が、今では側で対等に闘ってくれる大切な同僚に、そして恋人にまでなってくれた
誰よりもかけ甲斐のない存在だ。
見つめていると優しく微笑んだセイヤがアリスの唇にキスを落とす。
唇を離し瞳を覗き込むと、その瞳の中には幻想的な夏の華炎が舞い散っていた。